煙草

(高2の夏、屋上)

岡崎「おい吉野、探したぞ。先週貸したノート返せよ……

ってお前、それ……」

吉野「(喫煙シーンを目撃される)やべ。バレたか」

岡崎「……(大きくため息)……お前、いつから吸ってんだよ?」

吉野「んー、ひと月くらい前からかな。友達に遊びで一本もらったら、なんかクセになった。どうやら数学の授業の後に吸いたくなる。…ストレスかな(クスっと笑う)」


(岡崎、吉野の横に立ち、フェンスの外へ向けて煙を吐く横顔をじっと見る)


岡崎「…………

『……なんだろう……

ただタバコ一本なのに……

なんで、こいつがこんな男臭くて……こんな急に、遠くなった気がする……?』

(はっと我に返る)ってか、笑い事じゃないだろっ…見つかったらどうすんだよ!」


吉野「ほんとたまにだよ。……あ、ノート、俺の机に入ってるから。助かった」

岡崎「…全く……

なら、適当に机漁るぞ。——じゃあな」


(吉野、去りかける岡崎の手首をぐっと掴む)

岡崎「(ぎょっと驚いて振り返る)…っ!?なんだよ!!?」


吉野「岡崎……これ、誰にも言うなよな」


岡崎「(まっすぐに見つめられ、思わず手を振り払う)——言うかよ、んなつまらん話」

吉野「(ほっとした顔で笑う)ん。サンキュ。

——バレたのがお前で、よかった」


岡崎「……(行きかけて、立ち止まる)なあ」

吉野「ん?」

岡崎「今度ここに来るときは、俺も誘え」

吉野「……は?なんでだよ?」


岡崎「……屋上が、思ったより気持ちいい」

吉野「(ぷっと笑う)おもしれーよな岡崎って。A組の優等生が、そんなんでいいのか?……もし見つかったら一緒に怒られんぞ?」

岡崎「別にいい。俺は信用されてるから心配ない」

吉野「うあーイヤミ!

……でもまあ、お前がそう言うならな」


岡崎「……授業遅れるなよ」

吉野「ああ」



岡崎『(屋上を離れ、階段を駆け下りつつしきりに首を傾げる)……一体なんなんだ、このヘンな心拍数は…??

……しかも、今の自分の一連の言動も一体なんなんだ……っ!?』






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