第12話 軍政官として

24・風に射貫かれた地


『資料には少しだけ記述がありましたが、実際に見てみるとすごいですね。樹木が風に流された形で成長しているとは!』


 ミツカのあるザイール北部は大陸北側の海上から絶え間ない風が吹きつける地で、別名を「風に射貫かれた地」とも呼ばれる。まだ皇国も誕生していない太古の昔より風に射貫かれ続けたこの地では木も垂直には育たず、風に流され横薙ぎの姿で成長するという異様な光景を目にすることもできる。人はこの環境で暮らすため、風を防げる山間の谷間に住居を構え、谷間を吹く風を捉える風車を動力にしていた。ミツカが鉱山都市として発展し得たのも、風車の動力を利用し効率化を高めた採掘が可能だったからでもある。


(谷間の都市の後方は風渡る谷間、前方は半円形に城壁を構え風と外壁を防ぐというわけか。これに豊富な資源と資金力が加わったのだから、かつてのミツカがえらく強気に出たのも仕方がないかもしれませんね……)


 しかし現在、その城壁は崩れ街も見る影はない。これを復興させるというのが容易なことでないことは誰の目にも明らかだが、希望が皆無という訳でもなかった。人口が多かったこの街の出身者は多く、今回「あのフレッド=アーヴィンが赴任する」という話を事前に流したことで里帰りを決めた者が増え、新州軍に参加したミツカ出身者から志願兵の一隊を送られることにもなった。かつての栄光と繁栄は失ったが、いまここにいる人々の多くは絶望していなかったのだ。



「将軍のご到着を、今か今かと心待ちにしておりました!私は志願兵の隊を任されました、ソーシャ=ウィルゴートと申します。これから、よろしくお願いします!」


 その快活な女性兵ソーシャは、かつてのミツカでは有力な商人の娘だったという。ミツカの惨劇の折は家族に逃がされ自身と従者だけは難を逃れるも、家族も財産も名誉もすべてを失った。復讐のため叛乱軍に身を投じ、戦勝後は特にやることもなく新州軍に留まっていたが、フレッドのミツカ赴任の話を聞き志願兵に参加したという。


「将軍は私の家族の……いえ、私だけではありません。ミツカに縁あるすべての者にとって、親しい人の仇討ちを果たしてくれた恩人でもあります。そのご恩に報いるためにも、私たちは全面的に将軍をお支えすること、すでに隊の総意として取り決めてあります。何なりとお申し付けくださいませ。」


 ソーシャの言葉を聞いたフレッドは、内心では唸るしかなかった。敵意や殺意を向けられるよりはよっぽどマシだが、この「友好的一方的全面的依存体質」とでも言うべき態度は、それはそれでよくないと考えているからだ。どう陥れてやろうかと画策するぶん、敵対的な輩のほうが人らしいとさえ思えた。誰かに任せ、言うことを聞いていればいいという風潮を嫌ったからこそ、故郷を捨てねばならなかったのだ。


『ソーシャさん。今回このような形で赴任しましたが、ご存知のように私はミツカに何の縁もありはしません。この街のことは皆さんのほうが詳しいのですから、皆さんが新しいミツカをどうしていきたいか……まずはそれを、街の全員で知恵を出し合い考えてみて下さい。私はそのご希望をできるだけ叶えるために働きますから。』


 フレッドの言葉が予想していたものと違ったため、やや呆気に取られたソーシャではあったが、すぐに「命令を受諾した」という体でフレッドの前から立ち去り話し合いに向かう。フレッドとしては「命令だから」ではなく自発的に動いてほしいところなのだが、これが始まりと考え徐々に変えていけばいいと心に誓うのだった。


『……ところでそこの君。私はどこに寝泊まりすればいいのだろう。私物は少ないから自室は狭くてもいいのだけど、竜を繋げておける小屋が近い場所だと助かる。どこかそういう場所に心当たりはないかな?』


 声を掛けられた兵士は仇討ちの恩人と会話できたことに喜ぶも、返答には窮した。現段階では街の大半は廃墟同然で、住むと決めた場所を隊員総がかりで清掃するという有様だったからである。そして、その兵士が知っている竜小屋つきの物件と言えば運送を商いにしていた商人の家くらいしかなかった。


『これはさすがに、一人で住むには広すぎるなあ。でもこの竜小屋はなかなかいいから、竜はここに繋ぎ私は隣家に住むこととしますか。あの広さなら一人で掃除できますから、君もソーシャさんのところに戻ってください。』


 そう言って隣の家に入っていったフレッドだが、実のところそこは家ではなく物置小屋であった。後に「自身が駆る竜よりも狭い場所で生活している街の長」と笑い話にされるが、当の本人は「手狭で多くの物にすぐ手が届く」のが非常に便利だと、この生活を気に入っていたと書き記されることとなるのだった。



25・復興に向けての活動


『では復興に向けてまず、ならず者や[門]から出た異界の者の住処となっている鉱山を制圧しましょう。鉱山内部の地図はありますから、中の者らが新たに発掘でもしていない限り道に迷うことはないはずですが、なにぶん中に何が潜んでいるかは手掛かりがない状態です。必ず20人くらいの大人数でまとまって行動させてください。』


 ソーシャらミツカの生き残りたちが廃墟となった街をどう再建したいかと協議したものの、出た意見といえば「とにかく昔のような繁栄を取り戻したい」ことくらいであった。それではとフレッドが最初に取り掛かったのが、鉱山の制圧である。この街の主要な産業かつ、ザイールにとっても重要な鉱物資源の採掘場所なのだが、ミツカの惨劇から1周期ほども放置され続けたそこには、資源を売り払う目的でアジトを構えた野盗や山賊らのならず者、住む場所を失った敵対的な亜人やミツカの惨劇の折に[門]から出てきた異界の者まで、ありとあらゆる障害がいまだ残されている。これを排除しない限り、鉱山として復活するのは無理な話であったのだ。


『志願兵の隊は70人ほどと聞いていますから、これを3組に分け交代で坑道内の制圧を行います。人選はお任せしますが、戦いが苦手な者は街に残らせるようにしてください。街に残る数が多いようなら、各地の町村で募集した冒険者や傭兵が来るまで二組の運用で構いません。無理をして死者を出してはどうしようもないですからね。』


 ソーシャは惨劇が起こり、廃墟となった街の募集に応じる者などいないだろうと考えており、フレッドも基本的にはそうだろう考えていた。ではなぜ募集したかというと、皇国外からやってくる者も受け入れやすくするためである。募集をかけていないのに人が増えていけば疑念を抱く者が出る可能性もあるが、募集をかけておけば人が増えても「募集を見た」で済むだろうという計らいである。


「ご指示の通り、20名を一組として隊を分けました。三組は19名ですが、手練れの数を多めにし戦力の平均化を図っています。坑道内の探索と殲滅は一組で行いもう一組が街の治安維持、最後の一組が街で待機し問題があれば後詰となることも、すでに通達してあります。ではさっそくお下知を!」


 こうしてミツカの街の北端にある鉱山地帯の確保が開始される。一部の目ざとい野党はフレッド=アーヴィン赴任の知らせを聞き早々に去ったが、欲深い者は残ったため大半が捕縛された。言葉も通じぬ異界の者らは討滅以外に手がなかったが、それらも繁殖の機会が少ないこともあり、大半が駆除されるに至った。しかし最後に、一つ大きな問題が発生する。卵生の蟲らしき異界の生物が、坑道内のいずこかに巣を設け繁殖していることが分かったのだ。異界の生物の知識が乏しい自分たちだけでは危険があると考えたフレッドは、ザイラスのブルートに専門家の派遣を要請した。


『それでどうして、領主が自ら足を運ばれたのでしょうね。選択会議も20日くらい後に控えているのに、油を売っていて大丈夫なのですか?』


 フレッドは知識が豊富なテアを派遣してもらえれば十分と考えていたが、実際にミツカやってきたのはブルート一行の全員である。しかもダウラスは夜明けの星隊も引き連れていたので、ミツカはかなり賑やかになっている。


「そう、その選択会議な。それのため各地の町村に俺の考え方を伝えて回ってるんだが、ちょうどいいからミツカのある北部を回りながらここにも寄ろうと思ったってわけさ。赴任からまだ30日ほどなのに、ずいぶん片付いたみたいじゃないか?」


 今日はL1027育成期79日で、新領主を決める選択会議は収穫期1日の予定となっている。育成期の100日を使った宣伝活動期間も大詰めを迎えようとしている中、現段階では人口の少ないミツカに立ち寄る直接的な意味はないが、テアは間接的には意味があると考えミツカに寄ることを進言したという。


「解放の英雄としての記憶も新しい次の選択会議では、ブルート様が敗れる可能性は万が一にもあり得ないと存じます。それは相手方も同様で、彼らはこの機会を使って名を広めるためだけに立候補なさったのでしょう。ならばわたくしたちも、この機会を宣伝に利用すればよいのです。ブルート=エルトリオは廃墟となったミツカのことも気にかける領主である……と、今回はそういうことでございますわ。」


 つまり自分たちはブルートの引き立て役か……と思われかねない発言だが、ほんの数日とはいえ領主ブルートと護衛の兵団が滞在するのは大きな経済効果があり、わずか3日とは言え滞在期間中は兵団も復興作業の手伝いを行う。いまだ労働力不足に悩むミツカにとっても、この訪問はありがたい話であった。


「こういう理由でもつけて出てこないと、俺がお前の手伝いをするのは許されなくてな。まあそれはいいとして、坑道に異界の蟲の巣があると聞いた。いくつか思い当たるやつはいるが、どんな形だったか分かるか?」


 フレッドは目撃情報をまとめた資料を手に、これまで判明したことをブルートたちに伝えた。そこに書かれていたのは体長がおよそ5周期の子供くらいで、直線的な胴体の腹と思われる側には無数の脚、背と思われる側は硬い外骨格で覆われ、頭側には大顎、尾側には大顎に似た鋏を持ち、一見すると「頭がどちらか分かりにくい」というのが特徴の、ラスタリア固有種にはない異界の生物であった。


『頭と思って叩き潰したら実は尾の鋏で、そのまま逃げられたという報告がいくつも上がってきていますね。どうやら外敵から逃れるため擬態する習性があるようです。また、顎や鋏はなかなかに力強く、槍の木の柄くらいは簡単にへし折るという報告も出されています。こちらからは以上ですが、心当たりはありますでしょうか?』


 ブルート一行は輪になって相談を始めたが、ああでもないこうでもないと議論を終えた後に答えを導き出した。もっとも、それはやや意外なものだった。


「すまんが、その情報に完全一致するやつは記憶にない。ただ、似たようなやつを始末したことはあるから、もしかしたらそいつが変化した姿なのか、変化する前のやつなのかもな。仮に習性が似ているなら、手負いのやつは巣に帰って自らを残った仲間の餌にするから、見つけたやつを手負いにさせて巣に案内させればいいはずさ。」


 その情報をもとに討伐隊が組織され、結果的に巣の成虫は巣や幼虫ごと焼き払われた。ブルートは自らも参加するといって聞かなかったが、テアら一行のメンバーとフレッドに「立場を弁えろ」と猛反対されしぶしぶ街に残ることとなってしまう。しかしただ引き下がるだけでなく、彼は「それならミツカの長たるお前も居残るべきだろう」と条件を出したため、フレッドも居残り組に引きずり込まれたのである。


『受け持った街のことなのに待っているだけとは、どうにも落ち着かないですね。やはり責任者として、私は坑道に行くべきだったと思うのですが……?』


 坑道に向かうテアやダウラス、マレッドにフォンティカといった顔見知りやウォルツァー分隊長、ソーシャらミツカの志願兵隊ら総勢70名ほどで構成された討伐隊を見送りながら、フレッドはそう漏らす。


「それは俺だって同じさ。だが俺は行けないのにお前は行くって不公平だろ?なら俺と一緒に彼らの成功を願いながら悶々とする時間を過ごすしかないな。これに懲りたら、次は立場どうこうではなく一人の男として俺を止めないでもらいたいものだ。」


 フレッドは「子供じゃないんですから」と返すのみだったが、部下の背に隠れ安全な場所から自分ではできもしない無理難題を押し付ける上役よりはいいのか……と考えずにはいられなかった。もっとも、実際に彼が前線へ出たなら別の心配が付きまとうため、おそらくは「無茶をされるくらいなら後ろでふんぞり返るほうがマシ」と考えるに決まっているので、人は勝手だと心の中で嘲笑することになるのだが。


『待っている時間を無為に過ごすのもなんですから、こちらはこちらで今後についての話でもして待つとしますか。やや狭いですが、私の家なら盗み聞きされる心配もないので招待いたしましょう。』


 ヘルダではフレッドの一家がつつましやかな生活を送っていたと知るブルートは、フレッドの家も質素なものなのだろうという予想はしていた。ユージェ時代はもちろん、今や皇国軍団長待遇[銀星疾駆]の二つ名持ちである。贅沢をしようと思えばいくらでもできる立場でありながら、ヘルダ村にいた頃からいっこうに生活の質を上げようとはしない。質素倹約を旨としているわけではなく、自然とそうなるのだ。


「と分かってはいても、さすがにこれはどうかと思うぞ?こりゃあどう見てもただの物置小屋だよな。豪遊しろとは言わんし手狭な部屋が好みなのも自由とは思うが、仮にも大都市の長となる男がこれってのは色々とまずいだろう。できるだけ早いうちに新たな住居を選定してくれ。部屋は狭くていいから、見た目だけでも……な?」


 民衆のことも考えずに贅沢し放題というのは困るが、ここまで清貧というのも、これはこれで別の問題がある。最たるものは「長すら質素な生活を送っている」という委縮から倹約を強制され、それが不満という形で現れることだ。かつて欲深い既得権者に忌み嫌われた過去を持つフレッドが、今も清貧を維持して暮らすのは武具以外に物質的な欲がないからだが、それゆえに他人が持つ欲にも気づかない。一見美徳に見えるそれは、諍いを生む温床になり兼ねなかった。


『領主様が直々にそう申されるなら、甘受するほかありませんな。もっとも、実は私設隊の人員にユージェ時代の門下を充てようと考えていまして、彼らが来てくれたらそれなりの館を用意し、皇国の法や流儀などを学ばせつつともに暮らそうと考えてはおりました。どれだけ集まってくれるかは未知数ですけど……』


 そしてフレッドは、自身の立てた展望の話をした。まずはミツカの再建について、首都シルヴァレートで見た水道橋を建設し、住みやすい街として人々を集めるという施策を軸に進めることなどを説明した。


「確かにこの街は、風車の動力があるから水を橋に蓄えるのも難しくはないな。材料となる石にも困りはせんだろうし、いい案じゃないか。すべてが破壊され、無から設計できるからこそ可能なわけだ。」


 ブルートの言うように、既存の家が立ち並ぶ中で「邪魔だから立ち退け」というのは、なかなか抵抗が激しいものだ。金銭で解決するにも「ぎりぎり立ち退かなくていい人々」からすれば不公平感が出てしまい、強制的に立ち退きを執行すれば批判が出てしまう。こういった大規模事業は、最初に行うのが最も合理的であった。


『惨劇は不幸な出来事でしたが、それを乗り越えるというなら今の状況を利用しない手はないですからね。泥沼に落としてしまいもう口にできない果実も、畑の肥料にすることはできるでしょう。50周期後くらいのミツカの人々は、おそらく復興を成し遂げたご先祖に感謝するようになっているはずです。』


 そういった内省的な話が終わると、次は軍事の話となった。ブルートは新州軍の編成と練兵は順調だと語り、重装歩兵隊と重弩隊は順調に数を増やし、野鶲の傭兵団が母体となった斥候隊もほぼ編成を終えたという。


「といっても総勢で5000には満たん。もしユージェが全力で攻めてきたら、どうやっても俺たちだけでは凌ぎきれんな。そうなりゃ本領からの援軍が来るまで持ちこたえられるかは、指揮官の采配次第という訳だが……シャンクにそれができるかは分からん。軍学校の成績はよかったらしいんだが、それだけでは判断できんよ。」


 シルヴァレートまでは通常の竜車で約30日の行程である。国境付近にユージェ軍が出現したという知らせを、昼夜問わずの早駆けでおよそ10日。皇帝が設置を決めた狼煙台が完成していればもう少し早まるかもしれないが、いずれにせよそれから援軍が到着するまで30日は見ておく必要がある。合計で約40日という時間は籠城で凌ぐにはあまりに長すぎるため、国境に侵入されるところから戦いつつ下がり時間を稼ぐべき……というのがフレッドの意見だった。


『南部の小さな集落や村などの人々を一時的に受け入れるべく、街にはテントなどを立てられる広場や、余裕があれば仮設の宿泊施設も用意させる予定です。目安としては、広場の整備が次の皇帝生誕祭まで。その時期にユージェが動かなければ、もう1周期は猶予があると考えてよろしいでしょう。』


 皇国が総出で祝う祝賀行事の皇帝生誕祭は、言うなれば定期的に訪れる膨大なスキでもある。首都での催しに気を取られるその時期は、攻め入る側としてはまたとない機会となるのだ。フレッドは、ユージェが攻めてくるならそこだろうと読んでいた。


「まあ、そう考えると最初の危機がおよそ300日後か。時間はあるといえばあるが、ないと思えばないな。こちらではできるだけ兵員の増強に努めるが、どうやってもここから1000は増えないだろう。となれば、あとはお前のほうで集めるぶんを加えて勝負というわけか。叛乱軍の時みたいに全指揮権をお前に渡せるなら、それでどうにかしちまうんだろうに……世の中うまくいかないもんだよな。」


 そうボヤくブルートだが、そうさせないためにシャンクらはフレッドをミツカに追いやったのだ。少なくとも次の戦いでシャンクが下手を打たない限り交代できる可能性はなく、下手を打てばザイールの存続自体が危うい。好む好まざるに拘らず、生き残るためにはシャンクと共同で事に当たらねばならぬのだ。


『その時にできることを、ただ全うするのみですよ。さて、夜も近づいてきたことですし、夕食にでも行きますか。まだ廃墟を利用した店なんですが、主の腕はかなりいいんですよ。復興したら、あそこはきっと評判になりそうな気がしますね。』


 L1027育成期79日は、こうして暮れていった。ブルートは廃墟の街の中心にほど近い、屋根もないような店の軒先で満天の星が降り注ぐ中で食べた食事を確かに美味しいと感じた。それはフレッドの言うように店主の腕が良かったのか、久々に忌憚なく話せる友人との食事だからなのか、それとも息詰まるザイラスではないからなのか。いずれにしてもここミツカには絶望しかないと思っていたが、希望の光をもたらす存在がある。世を席巻する力をも秘めた、世界を渡りし銀色の流れ星……ブルートはこの輝きが見せる結末を傍らでずっと眺めていたいと考えたが、今の彼にもザイール領主としてやらねばならないことがある。


「3~4日もすれば、テアたちも仕事を終えて戻ってくるだろう。それまで、俺たちはユージェの侵攻に対する対応策でも練っておくか。次にこうして話せるのも、いつになるか分かったもんじゃないしな。」


 ブルートの予言通りテアたち討伐隊は3日後に帰還を果たし、ミツカの鉱山地帯は住民の手に戻る。復興の第一段階はこれにて終了し、ミツカは鉱山から収入を得る道を確保した。そしてブルートらがザイラスへ帰還を果たすと同時にミツカ鉱山の復興が宣言され、鉱山で一山当てようとする者が集まるようになるのである。また、この頃から傭兵や流れ者がミツカを訪ねてくる案件が増え、治安維持隊も拡大しつつあった。フレッドはその隊の名をどうするか悩んでいたある日、思わぬ珍客が彼の下を訪れたのである。L1027収穫期、つまりブルートらの領主選択会議も目前の育成期99日になろうとしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る