17 竜猿相うつ!
大口開いた
ガントレット型シングメイルが生成した光弾を、レッドがそのまま力任せに投げつけたのだ。
けっこうビックリする音がする爆発だったが、残念ながら敵のウロコを少々焦がす程度にとどまる。
「まだ足りねぇか。ミサオ、じゃんじゃん投げっぞ!」
促されるままレッドのシングメイルに
両手の光を次々と
爆発によって巻き上げられた粉塵が、敵の姿を覆い隠すほどになった。
「これだけぶつければ、倒れたかな!?」
「いいや、まだ
「ウッホ!」
突然の襲撃から立ち直ったキヨマサが身構える。
アイの方は少し動きづらそうな感じで木々の奥へと逃れた。
「ゔあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」
土煙の奥で濁った唸り声がして、乱杭歯の並ぶ上顎と下顎が飛び出してきた!
それを合図に、イケメンとゴリラは左右へ
両側面からの挟み撃ちを仕掛ける。
魔者が先に狙いをつけたのはレッド。平屋建ての一軒家ほどある巨体の大口がせまる。
その脇腹へゴリラパンチ!
キヨマサの拳がウロコの壁に到達した瞬間、深緑色の表皮が火を吹いて爆発!
天然のリアクティブ・アーマーとでも言うのか。キヨマサのゴリラパンチは完全に威力を相殺された。
「こないだのワイバーンと同じだ……たぶん、こいつの血も燃えるんだ!」
「血が燃える? 俺ァ馬鹿だからよくわかんねぇ……よッ!」
レッドは魔者の噛みつきをバック宙でかわし、抜刀。
着地と同時に喉元へ潜り込み、白刃を突き立てた!
滴る血液がジュウ、と音を立てて沸騰し、傷口を焦がす。
レッドが剣を引き抜くと、
< <未確認
「こいつ、体の中に
脳裏に“観えた”声と共に、閃いたことをそのまま口にする。
そして僕は、得体の知れないオーパーツを念じるだけで操る
「僕が突破口を拓けるかもしれないんだ!」
念じる。
<<動作介入、試行>>
頭の中に返ってくる手応えは、すっきりしない。
向こうの
「ゔあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」
不快な鳴き声。頭の大きさに比して小さな眼が、僕を捉える。
乱杭歯がぎぢぎぢと軋んだ。
とてつもない威圧感に、思わず足がすくんで集中力が途切れてしまう。
知らず力を緩めた両腕から、チャマメが飛び降りた。
「ビィー! ビィィィー!」
チャマメは、まだ上手に歩けない脚で懸命に――僕の前へ。
とんでもなく巨大な
懸命に僕を守ろうとしているのが分かった。
そんな健気なチャマメに対し、
「チャマメ――――!」
にぶい風切り音がして、僕は目を閉じる。
直後に浮遊感。
レッドが、両脇に僕とチャマメを抱えていた。
「お前、なかなか気合い入ってるじゃねえか」
敵の尻尾攻撃をかわしてからチャマメに微笑むレッド。
追撃の尻尾が迫るが――今度は白銀の手刀が一閃。極太の尾は中程から切り落とされた。
「ヴィナンさん! シャバーニも!」
「ミサオ、レッド! こいつは
駆けつけるなり、ヴィナンさんが敵の正体を明かす。
手に持っているのは、ゴリラ文字が書かれた古いバナナの葉。ゴリラの知恵が記されているという、ハオコ長老の蔵書だ。
「借りてきたんですかソレ。て言うか、ゴリラ語わかるんですかヴィナンさん!?」
「
「団長、話してるヒマは無いッスよ!」
レッドの叫び通り、切られた尻尾がもう再生を始めている。
……もう一度だ。
今度こそ、奴の再生を止めてみせる!
再び念じれば、悶えて呻く
「オッホオッホ! グオオ!」
すかさずレッドとキヨマサが割って入り。
降りてきた上顎を二人で受け止め。
「いくぜぇ……森の賢者の切り札、見せてやる! “
ゴリラのキヨマサと一緒に、非ゴリラのレッドが吼える。
二人の上半身が
巨体は裏返しの格好で泉に叩きつけられ、水飛沫が土砂降りになって落ちてくる。
「あッ!」
感じた!
剥き出しになった腹膜の内側に、強い
千載一遇のチャンスに、思念を一気に注ぎ込む。
視界が白み、頭に血がのぼってくらくらする。かまわない。
鼻の下にぬるりとした感触。
鼻血が出ているようだ。そんなの、気にしていられない!
手応えを掴め――掴め――掴め――――掴んだ!!
< <強制接続。
「ヴィナンさん、今です!」
「おうとも!」
合図に応え、美女が、
光の玉を握りしめた拳が直接、側頭部に叩きつけられた。
鱗の爆発は光にかき消され、拳が到達!
ゴリラが生えかけの羽をむしり取る。
傷口から噴き出した竜の血が、空気に触れたそばから発火!
デタラメに振り回し始めた鉤爪つきの前脚。
右側、鋭利きわまる白銀の蹴りが美しく切断!
左側、機械化ゴリラのメタルアームが無慈悲に打ち下ろされ、指の付け根は次々と
「ゔあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」
地面に頭の先が押し付けられるや、凄い勢いで土を掘り返し始めた。
不規則に飛び出すトゲ状のウロコがドリルの役割を果たしているのか。
「野郎、逃すかよ!」
「ウホ!(ミサオさん! 僕にも、あなたの力を貸してください!)」
シャバーニがゴリラ言葉で僕に何かを請う。
黒毛のすきまから覗くメタルスボディが淡い光を放ち、通訳なしでも彼の意思が伝わってきた。
< <
「オッホ(キヨマサさん。アイさんを――母さんを、頼みます)」
シャバーニの両腕が変化する。
フェイクのゴリラ皮革は輻射
この両腕に秘められた
時空の壁すら穿つ、凄まじい力を秘めた、
< <
銀の螺旋が唸りをあげ、燃える瞳にしかと宿るは
怒りのメガトンドリルが今、唸りをあげて
「グオオオオアアアア!!」
ゴリラ
回転中の
脳天に突き立ったドリルは、たやすく竜の頭蓋を穿孔!
燃える血と爆発を物ともせず、シャバーニはそのまま竜の巨体を掘り進む。
何かが弾け、攪拌されるようなくぐもった音が
ドリルの切っ先は、尾の付け根から飛び出し。
*
見事仇敵を討ち果たした未来のゴリラに、みんなが駆け寄る。
「やったね、シャバー……ニ?」
異変に気づいた僕たちは、勝利に浮かれることもなく困惑した。
――シャバーニの足元が、まるで幽霊みたいに透けてきていたのだ。
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