庭とプールの光

庭の周りに立ち並ぶ木々の隙間に差し込む6月の太陽光は淡い黄緑色の直線で、視界を斜めに細分化する。目の前には大きいとも小さいとも言えるプール。腰に届くかどうかという深さの水が、深い青色と灰色の間に留まり、硬直する。光の揺らぎがほとんど生じない水の断面に生気はなく、涼しさが感じられる。


プールは父が趣味で作り上げたものだ。わたしが生まれる前に足掛け数年、自分で材料を買い集め、コンクリートを練りに練り、防水を施して水を注ぎ込んだ。その作業を写真で記録することも含めて、お金と時間をかけた一大プロジェクトだったはずだ。父は泳げないし、釣りもしなかった。さらにはアウトドアを好む性格でもなかった。そんな人間が、なぜ自分のプールを作る必要があったのかは、よくわからない。わたしが生まれてすぐに、祖母が亡くなり、父はすっかり無口になった。休みの日には庭が見える家の廊下に座り、プールの水面をじっと眺めていた。ほとんど動くことのない水の断面を、ただただずっと眺めていた。


プールの横で働き続けていた室外機が突然音を止め、上で寝ている黒猫がピクリと耳を立てる。すっかり本来の原色を失った、黄色と水色のプランターは空っぽで、自分の居場所を守ることだけに必死の様子だ。近くに咲く黄色い花は、そんなプランターには目もくれず太陽だけに気を取られている。


風が少し吹いてきて、水面が一方へ流されはじめる。光の反射が生まれ、無数の白い点となって現れては消える。水面の下は未だに静かだろうか。それとも、光を集めた藻や水草が、活発に手招きをして微生物を踊らせ、それを魚が追いかけているだろうか。潜って見なければわからない。黄緑色の太陽光だけが、水面を通り越してプールの底にたどり着いている。わたしの目に入る光の反射も、届いているだろうか。記憶が吹き溜まる心の奥底まで。


傾き出した太陽の光はわずかに力を弱め、視界の切り取り方を変えた。

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