第22話 孫乾公々との契約

 ギルガッメッシュの酒場から離れた一行は、孫乾に連れられ街のあちこちで買い物をした。

 孫乾が全額払ってるわけだが、彼女も商人なので条件を出してきた。


 曰く、劉備が領地を持ったなら、無条件無課税一等地で商売させてもらうと。

 更に孫乾の店で関張疾風録を独占販売すると契約書を作成した。


 劉備に否はなく、関羽張飛も計算度外視で、今援助してくれるならと賛同した。

 唯一簡擁だけが単純計算して凄く損しますとデーターを出したが、逼迫した現状を鑑みてNOとは言わなかった。


「決まりやな。ウチはもうこの街には居辛なったし、洛陽でも行くわ。あんたらの評判にはビンビンとアンテナ立てとくサカイな」


「すまねーな。私とこの簡擁のせいで面倒臭くなっちまって」


「構へん構へん、それよりその子ロボットやろ。ウチに高くで売ってくれへんか」


 孫乾は最初から三千万Gを提案した。


「掛け値無しの一括払いでどーや。気持ち上乗せした額を提示してんねんけど」


 張飛が驚きと不安で劉備を見た。


「すまないが、ロボットじゃなく兄弟なのさ。先ほど決まった援助の話を蹴られても売れない」


 即答する劉備に張飛は安堵した。


「お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん!」


 冗談ぽくはしゃぐ簡擁もどこか照れ隠しっぽかった。

 こりゃ億積んでもアカンかと孫乾は苦笑いした。


 その後も数店回り、孫乾の後払い契約で全兵士に頑丈な甲冑一式と馬が用意された。


 回った武具屋も馬屋もあこぎな値段だったが、物は確かだからと孫乾は空手形を出しまくり、高利貸しにて多額の金を借りて劉備に軍資金として持たせてくれた。

 流石に劉備が払えるのかと尋ねたが、孫乾は笑って払う気はないと断言した。


「ウチは夜逃げするし、回った店は悪どい店主ばっかしや。何も気にする事あらへんよ。このカサイで今まで培ってきた信頼を売っただけの話や。一流の商人は品だけやなく信用も、ここ一番で売りに出すもんや」


 そう言われて金より信義を大事にする劉備はますます申し訳ない気持ちでいっぱいいっぱいになった。


「そない気にすんやったら早く手柄立てて国持ちなってやー」


 別れ際にも孫乾は気持ち良い笑みで送ってくれ、劉備一行は清々しい気持ちでカサイの街を後にした。

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