第14話 劉備の眼前で簡雍狙撃され墜落するの巻

「よーし、全員突撃だ! 関羽、指揮を任せる。見事に兵を動かしてみせよ!」



「はっ! 全軍この関羽と周倉に続け!」



 関羽は背中に負のオーラを纏いながら砦へと馬を駆けさせた。

 逃げ腰となっている山賊の首を幾つも飛ばしながら先頭を駆けるので、続く兵達は恐慌に陥った山賊を楽に蹴散らしながら砦へ侵入していった。



「なんつー恐ろしい奴だ……。私の武勇を霞ませる兄弟持ってしまったかも知れねーなぁ……」



「もう一人の兄弟を忘れてますよ~」


 劉備は声のした辺りを見たが誰もいない。

 が、

 突然、空中に簡擁の姿が現れた。



「おおう! 今迄どこにいたんだ」



「ずっと近くにいましたよ~。貴方の心の中に!」



「ずっとそばにいてくれたのママン!」



「気持ち悪い……です。まだ関羽さんの返しのが簡擁心をくすぐります」


 簡擁は空中でため息をつくと、その反動なのか僅かに後退した。



「とにかく地に足を付けろ。存在そのものが浮いてるっつーのに戦場でリアルに浮いてたら弓の的だぞ」



 劉備が言いきらぬ間に砦から放たれた弓矢が簡擁に直撃した。



 「!」 



 墜落する簡擁を両手で抱えにいった劉備だが予想外の重量に二人して落馬した。



 射撃された簡擁を庇って下敷きとなった劉備の腹に凄まじい圧力がのしかかる。

 鍛えた腹筋が無ければ内臓を損傷しかねない程に簡擁の体重は桁違いというか単位が違った。



「重! 子泣きジジイかよ! 見た目と違い過ぎるだろって言ってる場合じゃねーな、大丈夫か簡擁!」



「うぅ――凄く痛いです」



 呻く簡擁を地面に寝かし、更なる射撃から守るべく劉備は砦に背を晒して刺さった矢を探したが、外傷は見当たらない。



「どこに刺さったんだ! 服の上からじゃ分からんねーよ!」



 すると簡擁は苦悶の表情を浮かべたまま、人差し指を胸に当て、ここですと呟いた。



「いや分かんねー! 心臓か心の臓かオイ!」



「っ――心に、劉備さんの酷い台詞が心に突き刺さりました」



 そういう簡擁の表情は苦悶と言うよりニヤニヤを堪えてるように見えた。

 それでも劉備は尚、外傷が無いのか問い質し、矢が刺さってないかネジが外れてないか見回した。



「舐めるように見ないで下さい。劉備さんは変に真面目ですね。大丈夫ですよ! 私はクロモリブデン鋼で組織されてますから、ヘナチョコ弓矢なんてノーダメージですノーダメージ! むしろどこがクロモリなんだロリキャラなのにどの部位がクロモリなんだって返しに備えて臨戦態勢を整えてますです」



「やっぱネジが飛んだみたいだな。待ってな、お兄ちゃんが探してくるからな」



 下ネタ要求をさらりと流すあたりが劉備らしいとは言え、それで引き下がる程ロストテクノロジーは甘くなかった。



「酷いですねー、さっきも箸が転がる程度でせせら笑う年頃の乙女に対して重いとか言うし、泣いちゃいますよ」



「カカカ、そりゃ正に重罪だな、すまんすまん」



「また重いてニュアンスを!」



「あーん? こいつは重ね重ね申し訳ない」



「わー! また軽い口調で重いって苛めてる!」



「いい加減うぜー! この劉備が戦場において軽い口調で口を開いたりするものか」


 言うや劉備は馬に飛び乗り砦へと駆けて行った。

 残った簡擁は劉備からかい臨界線を戦場による誤差幅をもたせながら上書きメモリーし、後を追った。

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