無理筋。からの……
マルヤマの偉大なる一族が、クトゥルフ神話に登場する邪神との契約技術に長けているというならば。
荒ぶる邪神達にマルヤマ書店が「待ってちょ」とお願いすれば良い。
(これこそ、最短ルートでの解決だろ!)
俺は思った。
しかし……。
Kengo:あー。それは駄目なんだ。
Calc:えっ? どうして?
Kengo:まず、そういう大口の契約は、マルヤマの中でも、ごく一部の者にしか権限を持たされていないだろう。儂がマルヤマに居た頃にも、そのレベルの権限を持つお方にお会いしたことは、実は無くてな。
Calc:じゃあ! その偉い人を捕まえてお願いするのは? マルヤマの運営なり、サポートセンターなりに連絡して、「上の者をだせ!」って。「クレーマー」じゃなくて、「お願い」だってわかってもらえれば、取り次いでくれるかもしれない。
Kengo:金も無いのに?
Calc:へ?
Kengo:今のマルヤマの一族は、「企業」という形態で生命を営んでいる。利益も無しに、人間ごときに便宜を図るはずがない。しかも今回は、契約の重さが、尋常じゃないレベルだ。なんせ、通信パラレルワールド1583は今、邪神の「百鬼夜行状態」だ。
Calc:えー! マルヤマ書店って、全体で一つの生物なんですか? あ、長谷川です。
Kengo:「法人」ってやつだね。それに、法人の中の彼らが正気とも、思えないし。いくらマルヤマの一族て言っても、契約相手は作家だけじゃなくて「邪神」だよ?
Calc:そんな!! あ、西野です。
Calc:きっと、社員に時間外労働をさせすぎなんだよ……。
Calc:創作の現場って、クオリティを際限なく上げようとして、ブラック化しやすいって、聞いたことあります。あ、長谷川です。
Kengo:あとね? 今、異世界で起きている「邪神の百鬼夜行」って、パパゾヌが関係しているわけだよ。『パパゾヌ邪神アンリミテッド』っていう、邪神呼び放題サービス。それを取り締まる法律って、通信パラレルワールド1583には、まだ無いんじゃないかなぁ? 独占禁止法とかで対応出来るレベルじゃない。だってそれこそ、「予想もしていなかった怪獣が、突然、群れをなして襲ってきている」状態でしょ?
KP:ちなみに、現地の軍隊は、とっくの昔に壊滅している。邪神の群れに呑み込まれて。
Calc:まじか……。そんなのもう、どうしようもないじゃん……。あ、西野です。
Kengo:そう。普通の方法では、どうしようもない。このままだと、パラレルワールド1583は完全に崩壊。儂は、しのぶと会話ができなくなる。
KP:パラレルワールド1583のネットを飛び交う情報自体が、激減というか、死滅しつつあるし。
Kengo:えっ? 早すぎ! この通信そのものが出来なくなるじゃないか! まずいまずいまずい……。(半狂乱)
Calc:あの、ですね……。
「ハッピーエンドを諦めない」とは、言ったさ。
ああ、言ったさ。
に、したって、この状況下では、さすがに無理筋なんじゃないのか?
「うー! もーわからーーーん!」
にしのんが遂に、ぶっこわれた。凄い勢いで立ち上がり、土橋カメラの「橋カメ」のネオンの方へ向かって、頭をわしゃわしゃとやり始めた。
「「だ、大丈夫? にしのん」」
長谷川先輩と俺とが、まったく同時にそう聞いた。
途端に、長谷川先輩はハッとして、頬を両手でおさえて、ポッってなっている。
(???)
にしのんが、ジト目で俺たちを見て言った。
「2人して、いい雰囲気出しちゃってさぁ。わたしはもう、頭が爆発しそうだ。ボカァァァァン! って」
あれ?
ちょっと待て。
そのにしのんの言葉が、何かを。俺の中の何かを刺激した。
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