トゲトゲピッカリ
彼、あるいは彼女はご丁寧にも、俺の過去のSNSでの発言を引用して、送りつけてきた。
いまここ
Calc「つまらないモノですが、なんて、自作を
Calc「当たり前ですよね? 読んでもらいたいなら」
そして、マルヤマ大賞が発表された途端に、次のメッセージだ。
続けざまに、こう。
でも、その先の展開も読めてしまう。
俺が本当に、「別ペンネームで」受賞しているならば、
逆に、俺の落選が確認できた場合は、多分こいつは、全力で俺を煽ってくるだろう。「なんだ、つまんないんじゃん」とでも言ってくるだろうか。
詰んだ。
消えてしまいたい。この世から。
そうだ。マルヤマ書店編集部から、「お前の作品はつまらん」と
電気を消す。真っ暗な部屋になる。もう夜中だ。夢の世界に逃げ込もうとする。
しかし、スマホが断続的に光る。次のメッセージの受信を伝える耳障りな音が、ブーブーと、何度も何度も鳴って、俺の神経を逆撫でする。その度に、真っ暗な部屋を、スリープ状態から復帰して点灯するスマホが照らす。
おかしい。「光りが射す」って表現は、事態が好転する時に使う言葉じゃなかったか? なのにこの光は、俺の心をしたたかに痛めつけてくる。
光は、粒子と波との性質を有するモノだったはずだ。まさかこんな、鋭い
空調の効いた部屋は涼しいはずなのに、体から変な汗が出る。特に、首筋の裏あたりがひどい。
(スマホの電源を落とすしかない)
そんな簡単な事に気づくのにすら、時間がかかってしまうほど、俺は精神的にやられた。
電源ボタンを長押し――。
スマホの火が消える直前に、プッシュ通知で表示された次の受信メッセージが、俺の翻意の理由だった。
スマホの終了エフェクトが終わり、物言わぬ真っ暗な文鎮になったそのスマホに、俺は再び電源を入れる。
そして、開く。
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