その2 ええ、相対論?
1.は特殊相対性理論の導入で、聞いたような話ばかりでてくる。面白くなるのは2.以降な気がするので、飽きそうな場合はそちらから読んでいただきたい。特に重要な部分には傍点をつけてみた。
***1.光の速さが変わらないだと?***
特殊相対性理論を非常識たらしめている原理の一つに「光速度不変」というものがある。
光は追いかけようが、逆に遠ざかろうが常に一定の速さで進んでいるという原理なのだが、如何せん光は速すぎて、それが我々にどういう現象をもたらしているのか直感的には理解しにくかったりする。
ここではおそらく多くの人が中学校あたりで触れ合ったであろう「追いかけ」の問題をネタに、光速度不変の原理と触れ合ってみたい。
今この宇宙で光の速さが10 m/sになったとしよう。かのウサイン・ボルト選手よりもちょっと遅いくらいかな。「知らない子ですね……」な人はWikipedia先生を頼ろう。
これくらいの速さなら光に追いつき追い越すことができそうだが、光速度不変の原理のために我々は光の速度を超えることはできない。
前置きはこれくらいにして、そんな光と徒競走を始めよう。
5 m/sで走れるたろう君が、ライトが点いた瞬間にスタートして光を追いかける。
1秒後、進んだ距離はライトの光が10m、たろう君が5m。
たろう君の5m先をライトの光が進んでいる。
言い換えるなら、1秒間で5m、光が進んだように見えるから、たろう君にしてみれば光の速さは5 m/sと遅くなっている。
そりゃそうだ。追いかければどんなものでも多少は遅くなる。
と、ここで光速度不変が発動する。
光を追いかけているたろう君から見ても、光の速さは10 m/sでなければならない。気障ったらしい言い方をすれば、それがこのセカイのルールってものなのだ。
というわけで、追いかけても光は遅くならない。
などと簡単に言いはするが、光はたろう君の5m先にいるし、そもそもなんでそんなことになったのかと言えば、たろう君が1秒間走って5mぶん光を追いあげたからである。
「セカイのルール」と抜かしてみても、この「1秒」で「5m」というのをなんとかしないと、どうしたって計算が合わない。
そこで、たいへんなご都合主義に聞こえるのだが、たろう君のセカイと我々のセカイを違うものとして扱ってしまおう。
我々のセカイでは「1秒」で「5m」、光が先に進んでいる。それはそれとして、たろう君のセカイでは「0.5秒」しか時間が過ぎてないとしよう。
うん、「0.5秒」で「5m」進んだから、光の速さは10 m/sだ。
実際にはもう少し複雑で、たろう君のセカイでは「0.8秒」で「8m」、光が先に進んでいる。数値はわかりやすい値にしているので正確ではないが、時間は遅れ、空間は伸びるということをつかんでいただければ幸いである。
はて、なんで空間までゆがめなきゃいかんの、と思われるかもしれない。
これは、「光速度一定の原理」は、どの方向に光が進んでいても成立しなければならないためである。
時間の流れる早さを変えるだけでは、たろう君に向かってくる光が速くならないことを説明できないのだ。
以上のような、我々のセカイでの「1秒」で「5m」が、たろう君のセカイでは「0.8秒」で「8m」になることを求める計算を「ローレンツ変換」と言ったりする。
本質的には時空間における座標変換であるが、三平方の定理を使ってある程度はどんなものか知ることができる。興味のある方はグーグル先生に聞いてみよう。
***
ちょっと悩んでみよう。
セカイは2つに分断されてしまった。「1秒」で「5m」先をゆく光と、「0.8秒」で「8m」先を行く光がある。
おなじ時空で起きていることなのに、どうもどちらかが歪んでしまっている。
どちらが歪む前の「正しい」セカイなのだろう?
特殊相対性理論には「相対」という文字が入っている。
相対、というのは何かと何かを比べること。
また、対義語の「絶対」とは、(化学的には)ある基準を0としてモノゴトを計ること。
(たとえば「絶対温度」は−273.15 ℃を「0」としたときの温度である。)
悩みに戻ろう。
答えはどちらも「正しい」セカイなのだ。
特殊相対性理論は、この宇宙に絶対の基準となる座標を求めない。絶対の時間もなければ、絶対の空間もなくてよく、「みんなちがってみんないい」というフレーズを地で行く理論といえるかもしれない。
地球は46億年前にできたそうだが、とある惑星では地球ができてから50億年の月日が流れていたりする。
明らかに食い違ってるけど、どちらも正しい、そんな具合のことが起きちゃう。
そしてこの相対性が「固有時」を導き、「同時に起きた」という事実を揺るがしてくる。
うんにゃ、ここまで適当な例え話で相対性理論をネタにしておいて、いきなりたいそうな話になるはずもないので、よければ2.にお付き合いください。
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