第5夜 橋は架かった。いざ!
ついに、この日がやって来た。スマホをつけると7月28日(土)9時30分の文字が表示される。待ち合わせは10時。不安で早く来すぎてしまった。
私の名前は、
私、これで大丈夫だったかな。館内にあるトイレで一人、全身が移る鏡を凝視する。薄水色の半袖のシャツに、膝丈くらいの紺のスカート、黒の少し高さのあるサンダルに、薄茶色でアンティークな肩掛けバック。どれも、昨日の夜に真美と相談しながら決めたコーデだ。
残念ながら、私には恋人というものがありながら、ファッションセンスがない。皆無だ。休日に出掛けようと思えば、妹にダメ出しされ、母にはファッション雑誌を買えと言われる始末だ。よって普段から服を買いに行くときは真美か妹と行く。ついていく。
そして、昨日も妹を頼りにしていたのにその日に限って部活の合宿でいないときた。仕方なく、真美とテレビ電話をしながら、可愛く、涼しく、動きやすいコーディネートにしてもらった。
「
久々に聞く声に呼ばれ、私はサッと振り向く。
「久しぶり~」
輝の顔を見て思わず笑みがこぼれる。ヤバい。顔がゆるむ。誤魔化すように顔を押さえると、
「どーした?」
と、聞かれる。嬉しすぎて顔がにやけるんだよ!!とは流石に言えず、
「ううん、なんでもない。じゃあ、行きますか!」
と、言って一緒に隣を歩き出す。
「そいえば、早かったね。俺も早めに家出たつもりだったのになぁ。いつ来てたの。」
気にする輝に、
「ちょっと計算間違えて30分についちゃった。」
と、正直に言う。私は嘘が物凄く苦手だ。たとえそれが相手を気遣う嘘でも「大丈夫、今きたとこ。」なんて、言ったところで絶対顔にでるから。
「そっか…でも、待たせてごめん。」
そう言う彼に
「いいよ、輝が早く来てくれたお陰であんま並ばなくて済みそうだしね。」
と、今日のデート場所・
そこは、今とても人気のカフェで先月オープンしたばかりのお店だ。2週間くらい前に真美と来て、ほっぺたが落ちるほど美味しかったフレンチトーストはここの人気メニューだ。それを食べたとき、甘い物が苦手ではないが控えめの甘さを好む輝にはぴったりの味だと思ったのだ。
それを話すと、
「それは楽しみだね」
と、言ってくれた輝を見てまた頬がゆるんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます