自分の見ている世界と周りが見えている世界

ここで隅に一人でいる宗太郎君の姿を見つける。どうやた他の子供達に交えないらしい。

「宗太郎君、中に入らないのか?」

横に座り宗太郎君に話しかける。と言うか、後4人来れば全員そろって夕食になってしまうのでその前にきちんと話しておく。

「いい、みんな僕のことを嫌ってる」

そう、宗太郎君は呟いた。確かに一度失敗したことは続くと言う風に考えることは多くあることだがその状態から次は成功する、と言った風に考え方を変えることは難しい。しかし、これを超えて貰わないと僕としても心配事も増えるし、宗太郎君にとっても不都合な事しか起きなくなってしまう。

僕が勇気を出してチャレンジしてやってみようと言ようとした時だった。宗太郎君の周りに子供たちが集まっているのに気付いた。どうやら、宗太郎君が嫌われているのかと思っているのに対して皆は、迎え入れようとしていたらしい。

「どうしてそんなこと言うの?私たち、一度でもそんな素振りを見せた?」

横に立っていた杵築が声を上げる。その後に他の子も次々と声を上げ、皆で中央の席に連れて行っていった。とりあえず、宗太郎君の孤立問題はどうにかなったが、まだまだ、これ以外にも問題はたくさん残っている。

能力ちからに関することや、元両親との裁判問題・マスコミ対応、それに宗太郎君の心のケアもあるし、取り合えず3ヵ月かな、目安としては。


「後の奴は公安に任せているけど、引かねぇ奴の対応で遅れるらしいから先に食べただとさ」

公安の腕章を付けた今山が中に入ってきて机に着く。どうやら、マスコミはしつこいらしく警察に対して報道規制等と言った事を訴えているらしく、その対応でまだ志井の奴は遅れるらしい。



その後、所長の合図の元夕食が開始される。

報道の自由・報道しないの自由は否定はしないがきちんとした手順を踏んでからじゃないと威力業務妨害で報道規制を引きますとあれほど言って居るのに関わらず、メディアの取材は違法行為ぎりぎり…の状況で行われている。

そう言ったことを巧みに使用し、自分たちの都合の良い形に美化した上で報道をする。

そう言ったことをするからメディアは嫌いだ。特に毎朝新聞社系列は違法に密着取材をしたり無許可で敷地内に入ってその成果を放送している。さらにネット上に上がっている写真を無許可で加工し、それを心霊写真として放送したり、真実かどうかもわからないネット上の情報を真実として放送したり・・・。

上げたらきりの無い行動・・・そう言った行動の積み重ねで真実は偽りに埋め尽くされてしまう。

そう言う事が繰り返される現代では宗太郎君の能力は有望かもしれない。


「よお、またお一人様とは寂しいな」

夕食を手にもってさっきまで外にいた庶務の香椎が隣に座ってくる。

「悪かったなお一人で」

「それで、どうなのか?最近はいってきた子は?」

「いや、予想に反して、かなり厄介だね」

「そうなのか、俺はこのまま上りだけれども、今日もお前泊りか?」

「まあな、万が一発狂でもされてみろ、誰が止めるんだよ」

「一度も立ち会ったことない癖に」

「悪いな、研修に一回立ち会ってるぞ」

「研修は含まないの。

 つか、お前、家はどうした?」

「家?あぁ。全く帰ってないな」

「いいのか?心配してると思うぞ」

「俺の家に心配する奴なんて居ねよ」

「それもそうか、それじゃ、先に上がるぞ」

そう言って俺よりも早く食べ終わって上がる香椎。

一体どうやったらあのスピードが出せるんだろうか。


心配する奴ねぇ・・・

居たら良かったかもな。


少なくとも、あんな環境じゃ生きるのに必死だったし、そんなことで他人の心配なんて出来るはずもないしな。

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