第9話

 ――パン屋の山田


「いらっしゃいませー」


 小さな女の子がそう言ってセロたちを出迎える。


「あ、桃ちゃん。

 こんばんはー」


 オトネが、ニッコリと笑いその少女の方に向かって挨拶をする。

 少女の名前は、山田 桃。

 好奇心旺盛な4歳だ。

 そして、少し遅れて少年が挨拶をしに来る。


「あ、セロの兄ちゃんたちだ。

 こんな時間に珍しいな!」


 少年の名前は、山田 瓜。

 少し照れ屋な5歳。


「や!」


 オトネが、腕を上に上げ挨拶をする。


「太郎はいるか?」


 清空が、そう言って瓜の方を見る。


「ああ。父ちゃーん。

 清空さんたち来たよー」


 瓜が、そう言ってカウンターの方に向かって声を出す。

 するとカウンターの奥。

 調理場から、青年と女性が現れる。

 男の名前は、山田 太郎。

 女の名前は、山田 萌。


 瓜と桃の両親である。


「待ってましたよ。

 ちょうといいマンションの空きがあってよかったっすよ」


 太郎が、そう言って苦笑いを浮かべる。


「ふたりで、同棲……

 いいわね、若いからなにがあるかわかんないわよ?」


 桃が、ニッコリと微笑む。


「なにもおきませんから」


 セロが、小さく反抗した。


「そう?残念ねー」


 桃が残念そうにため息をした。


「じゃ、部屋に案内するっす。

 2LDKで、Wi-Fiなどのネット機能など充実してるっすよ」


「それは、助かります」


 太郎の言葉にセロがニッコリと笑う。


「マンションは、ここの裏っすよ」


 太郎がそう言ってドアを開け、パン屋の山田から出た。

 そのあとをセロにオトネ、清空がついていった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る