第9話 ギャンブル必勝法とビットコイン…

「カジノで必ず儲ける方法の答えは胴元にまわること、つまり、カジノを経営すること……」

 

 私はあまり自信がなかったので、さっき取ったメモを見ながら続けた。


「それから、佐賀国自国通貨Sを作る時にヒントにしたのはビットコインではなく、ポイントカードってことね?」


「その通り」


「そして、通貨は『誰がケツを持つか』で、仮想通貨は『誰が使っているか』の違いってことね」


「ああそうだ。財源が少ない佐賀県が儲けるために、胴元に回ることを考えた。つまり、お金を稼ぐより、作ってしまおうと考えた。通貨発行権を佐賀が持てる方法をだ」


「作るだけなら、仮想通貨の方が楽そうな気がするけれど、なぜ、佐賀国は仮想通貨を使わなかったの?」


「まあ、成り行き次第って言うのが本当の所なんだが、整理すれば、信用を得る為の時間が無かったからと言っていい。佐賀国は突然現れて、周りの評価を得る前に国として成り立つ必要があった。じゃないと、横槍が入ることは明白だ。飯盛いさがい総理が根回ししてくれていたが、ひとつにケチが付けば、一気に全体が崩れてしまうような危ういものだった」


「初めは地域振興券として発行したのよね?」


「そう、地域振興券の話があったのはチャンスだった。当時の佐賀県には独立するだけの財源が無かったが、自国通貨を発行できれば話は変わる。その後ろ楯に日本国通貨が付くとなれば、信用を損なわず発行できるわけだ。日本が法的に認めている地域振興券、つまり、自治体のポイントカードを発行し、佐賀国として独立した後は、そのまま、自国通貨として流用した」


「日本国通貨の信用をそのままもらって、佐賀県内でのみ使える佐賀ポイントを流通させたのね?」


「ビットコインは皆が使い始めてしまったという既成事実が信用となり立ち上がった。ざっくばらんに言うと、あの人も使っているから大丈夫だろう、という信用だ。対して、佐賀ポイントSは、円に換金できるから大丈夫という、円に対する信用があってこそ……だから、成り立ちは似ているが、根本が仮想通貨とは違う」


「うーん、わかったような、わからんような」


「まあ、今日はこの辺にしておこう。また疑問が出てきたら、その時に答えよう」


「あ、はーい」

(多分もう聞かない)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

佐賀国大統領の日常 柳佐 凪 @YanagisaNagi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ