第3話 お金儲け――伝統工芸

「さて、どうやって金儲けするかな」


「あれ? 佐賀国は農業に特化していくって鍋島君言ってなかったっけ?」


「それはそうなんだが、他にも必要だと思ってね、いろいろ考えて試しているんだけど、理沙にも何かアイディアがないか聞いておこうと思ってね」


「うーん、そうね、やっぱり日本の売りは文化と技術じゃないかな? 佐賀国も、ちゃんと文化を引き継いでいかなきゃじゃない?」


「おう、まともなことを言うね」


「まともじゃダメなの?」


「そう言うわけじゃないけど……実は俺もそう考えてた。独立したけど、次の目標は日本を征服することだからね、日本の良いところはそのまま残さないとな」


「日本征服の話は順調に進んでるの?」


「多分ね」


「適当な返事ね」


「進めてるのは理沙のおやじさんだろ? 直接聞けよ」


「だって、ずーっと東京にいるから、最近会ってないのよ、だから、鍋島君は何か聞いてるかと思ってさー」


「そりゃ、日本の総理大臣が、そうそう東京を離れるわけにはいかないだろう。俺も何も聞いてないけれど、問題あれば連絡くるだろう? それより、金儲けの話なんだが……」


「そうだったね、文化と技術でお金儲けね」


「派遣会社をやろうと思うんだ」


「派遣会社? なんだかイメージ悪いなー。ブラック? ブラック佐賀国になるの?」


「そりゃ、良い派遣会社も、悪い派遣会社もあるよ。人身売買よろしくピンはねばかり考えているところもあるけどな、ちゃんと技術を蓄積してエキスパート集団を作り上げたところだってある」


「ふうん、で、何のエキスパート集団を作るの?」


「ふうんって……興味薄いな……まあいい、伝統工芸師の派遣会社をやろうと言うことさ」


「うーん、ピンとこないなー」


「日本中に人員不足で途絶えそうな伝統工芸が沢山ある。そこに佐賀国から人手を出すんだ、よろこばれるぞ」


「でも、伝統工芸って厳しい世界なんでしょ? 派遣会社って辞めやすいってイメージ……長続きしないんじゃ?」


「だからこその派遣なのさ。伝統工芸の道は険しいし、潰しがきかないから、簡単には飛び込めない。しかし、派遣にすることで、就職のハードルを下げてやろうってことさ」


「なるほど、向いてないと思ったらすぐ次の伝統工芸へ移れるのね?」


「向き不向きは必ずあるからな、でも、やってみなきゃそれもわからない……まずは始める人を増やすんだ」


「なるほど、一理あるわね。で、伝統工芸師を増やして儲けるのね? でも……そしたら佐賀からは人が出て行ってしまうばかりじゃない? そんなのだめよ。ただでさえ人口少ないんだから」


「そこは考えてある。派遣してもずっとじゃない。ローテーションを組んで本社に帰ってくる期間を設定しておく。そして、伝統工芸師養成学校の講師を務める義務を課す」


「ふむふむ、面白くなってきたわね」


「養成学校からどんどん人を輩出して、日本全国へ派遣する。いつか、日本中の伝統工芸師のほとんどが佐賀国伝統工芸師養成学校卒ってところまで目指す。しかし、それでも地域の都合で途絶えてしまう伝統工芸もあると思うんだ」


「それは残念ね。でも仕方ないのかな……」


「仕方ないで終わらせたくない。だから、佐賀でやるんだ。日本中から伝統工芸を学んだ人間が、佐賀へ戻って講師を務める。気が付けば、日本中の伝統工芸は佐賀で保存されることになるんだ。日本中のいにしえからの技術と文化が佐賀に集中する。更に集まった伝統工芸が融合して新しいものが生まれる。新しい伝統が佐賀から生まれるんだ。きっと世界的にも貴重な都市と呼ばれるだろう。絶大な観光資源になりうる。英章が築城している新佐賀城と相乗効果で観光客を呼んでくれるぞ」


「なるほど! そこに絡めてきたか! お主やるな!」


「理沙……お前、たまにおっさん臭いよな」

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