第2話 魔力

 この世界は所謂、化学より魔術が発達した世界。生きとし生けるものは大なり小なり魔力を体内に宿し、それを放出している。自らの意思で自由に操るには訓練によるコントロールが必要だが、ペンを持って字を書くくらいの気軽さで簡単な生活魔術なら誰でも使っている。元々保持している魔力の量は訓練で多少増やすことはできるが、基本的には生まれついてのものだ。

 またこの訓練が厄介で、やはり向き不向きというか、得手不得手が出てしまう。例えば魔力量が多くて常に最大値でしか魔力を放出できない奴は、簡単に言えば体力バカの様なものである。子供が水鉄砲の様に遊んだり、生活魔術としては水を瓶に貯めたり、洗濯や沐浴に使う水を操る術だが、魔力バカが使うと辺り一面水浸し。戦場で使えば津波のように敵を押し流す。当然、洗濯物も押し流す。最悪家ごと村ごと押し流す。そして一回でほとんどの魔力を消費してしまうため、一発屋とも呼ばれている。逆に魔力量に関わらず、小さな術しか使えない奴もいる。こういう奴は細かいコントロールに長けている場合が多く、小さな火をまるで矢の様に飛ばし、スナイパーの様に敵を仕留めたりもする。その代り大技が使えないので、一度に大量の敵を倒したり、大きな壁で味方を守ることもできない。

 つまり、魔力量があって大技も小技も自由自在に操れる奴が最強なのだけれど、この世界でも例外ではなく、そんなチートな奴は滅多にいない。滅多にいないから、国は一人でも多く育成するために、身分に関係なく子供は5歳になると魔力量を測定し、都市部なら魔術院、田舎なら教会でコントロールや文字、簡単な計算等を学び、総合して能力の高い者は首都の本院での教育も受けることができ、上手くいけば魔導士への道も開ける。謂わば、エリートコースへの道が身分に関係なく開かれている。

 義務教育で識字率ほぼ100%の国で育った俺としては、教育体制が整っているこの国は、決して悪くない印象だ。

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