エピローグ

「勝手に巻き込んだりして、本当にごめんなさい」

「過ぎたことはもういいよ。僕らだって、邪魔しちゃったわけだし。それより、体は大丈夫?」

「なんとかね」

 戦ってる最中は全然気付かなかったけど、もうすっかりと日は落ちて、辺りには夜の帳が下りている。イヅナに先導してもらって、どうにか登山道までは戻って来られた。高い山でもないし、そろそろ下りられるだろう。

「葛葉さーん! マッキーさーん!」ふもとの方から、電球の声が近づいて来る。

「──! おーい、ルリちゃん! こっち、こっち!」それに気付いて、マッキーも大声で電球を呼ぶ。

「あっ! 居た居た! もう! 二人とも、遅すぎます!」そう言って、電球は私たち二人に抱きついた。

「ちょっと、いきなり何?」今朝と同じく動揺する私。

「ええっ!? ルリちゃん、待って!」昨日と同じくパトランプみたいになってるマッキー。そういえば、電球の苗字って『町田』だったわね。これってまさか……

「もう、心配したじゃないですか!」

「ルリちゃん、分かったから、一旦離れて!」

「え? あ、はい……」電球が手を離す。

「はあ、死ぬかと思った」マッキーは力が入らない様子で、情けなく地面にへたり込んだ。うん。私の予想は多分、合ってる。幸せそうだ。でも、私なんかと一緒に居たら、二人が二度とこんな顔を出来なくなるかもしれない。

「……あんたたち。もう暗いし、早く帰りなさいよ。私、まだやることがあるから」

「え? そうなんですか? せっかく一緒に帰ろうと思ってたのに」

「ルリちゃん、それはまた今度にしよう? 今日は色々ありすぎて疲れたよ」

「それもそうですね。それじゃ、葛葉さんも気を付けて帰ってくださいね」

「ええ。それじゃ、また明日ね」


「美咲、もう仕事は残ってなかったのに、なんで一緒に帰らなかったの? せっかくあの子たちの方から仲良くしてくれてるのに」二人と別れた後、イヅナが尋ねる。

「仲良くされたら困るのよ。あくまで私は妖怪の調査のために、この町に来てるんだから。『仕事に私情を持ち込むな。たとえそれが友情でも』って、お姉ちゃんが言ってたでしょ?」

「……本当にそう思ってる?」

「本当よ」

「ところで、美咲。任務に民間人を巻き込んじゃったこと、神主さんにどう報告するつもりなの?」

「……あ」

 結局この夜、私は神主さんに散々怒られたのだった。

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