望郷
それが嘘であったとしても、
夢さえ見れれば幸せよ。
道に死んでいる栗鼠のように
私が死んだら、
私は完成するでしょうか。
何も成し遂げず、
誰かが私に投資してくれたものたちを
ただ浪費して、
このまま自分の時間を止めたら
私は完成するでしょうか。
もう少し頑張らなければ駄目かしら。
目が潰れて、手足を伸ばしたまま
固まっていた栗鼠は
一体何を思って生きていたのか。
それでもそれは今この瞬間
確かに一度終了し
完成したものとして
静かに、ただ圧倒的にそこにいる。
生きている限り、私は不完全で、
動いている限り、私は未熟である。
何かを成さなければと自身を急かし、
またそれでも動かぬ自身を
罵って生きてきた。
ここで終われば、止まれば、
私は未熟な自分を完成できる。
何かを成し遂げなければと願うまま、
終わった愚かな生き物として、
私は完全になる。
嗚呼 終わりたい止まりたい。
それは誰かの腕の中のように
魅力的な場所。
かつて私もそこに居たのだと思う。
そう、だからこれは
まるで望郷の思い。
帰りましょう。
どうかお願いですから、
夢の中だけで終わらせないで。
私は、これでいい。
愚かで惨めなままでいい。
このまま続けても一体、
どう変われると言うのでしょう。
恐ろしくて一歩も、
動くことができないでいるのに。
ただ待つのはとても辛い。
人を裏切るのもとても辛い。
でもこの夢から覚めたくはない。
嘘であっても構わない。
でももう耐えられないの。
終わりにしましょう。
また一匹の栗鼠が死ぬだけよ。
何も変わりはしないでしょうから。
お願い、お願い。
後は私が頷くだけよ。
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