煙と炎
車を七台を持っているという
南米から来たというのに
珍しく白色人種のような顔をしていて
背は低く、疲れ切っている筈なのに
上品な優しい顔で
いつも微笑んでいる
手の上に乗せた何かに火を付けて
それを握りつぶして遊んでいる
私と同い年の息子がいて
彼を愛してはいるが、
一緒には住んでいない
何かを吸う動作をしてみせて、
Please don't と言う
英語は私と同じくらいしか話さない
Please, don't
なぜ?
Because you are very beautiful
-
大きな目と顔をしていて
やはり背は低く、
褐色の肌に十字架の刺青がある
住んでいたアパートが火事で燃えた
小さな娘が二人いるのに
彼女たちは父親に
なぜ毎日働くのかと聞く
彼はお前たちの為だと答える
お前たちはこの国の人間なんだ、
この国の人間なんだ
自分は英語を殆ど話さない
火事の起こる前に言っていた
今は自分の生活は安定しているから
持っているものを分け与えるのだと
そうしてよく料理を詰めてくれた
いつも辛い異国の料理を
私の顔が、笑った顔が、
彼の小さな娘達の
一人に似ていると言う
秘密を教える、と言われて
そう微笑まれた。
so you are special to me
火事のあとも彼は何も変わらない
相変わらず陽気で優しいまま
仕事が終わりに近づくと
どこに隠していたのか
よく冷えた南米のビールをくれる
-
自分の国を愛し、
私の国も大好きだと言う
$1,000を持ってこっちに来た
今は$4,000に膨らんだ
国に帰れば充分金持ちだと
嬉しそうに言っていた
でもここで働き続けるという
you are different
そう言って、
よく外に連れ出してくれた
私より背が低く、それでいて
南米人独特の力強い体型をしている
英語を殆ど話さないから、
話せさえすれば、永住権が取れるという
you are different
私の国とその文化が好きだという
Thank you と言うと怒って、
ありがとうと言うと嬉しそうに笑う
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