第42話*アンテナ*

 私と李華は、食堂でお昼を食べ終わると席でそのまま休んでいた。

「落花生、思ったより早く芽が出たけど、なかなか大きくならないね」

「それで小袖は、部長と一緒に間引いてたんじゃないの?」

「そういうわけでもないかな。もともと間引く前提で種まいたし」

「ふーん」

「李華の方は、トマトの受粉うまくいったの?」

「分かんないけど、棒で叩きまくっといた」

 なんだかトマトの花が可哀そうだけど、第一花房は確実に受粉をやらないとダメらしいのでしょうがないのかななんて。

「こんな時間か。教室に戻るしかねえな」

 李華は毎日、諦めが悪い。


 並んで廊下を歩いていると、向こうから雅ちゃんがやってくる。

「よう! 雅。もうすぐ午後の授業だぞ。サボるのか?」

「李華先輩と一緒にしないでください!」

「そうだな、わりいわりい」

 李華、否定しないんだ……。

「これから学年全体で、スマホ教室とかいうのをやるので体育館に集合なんです」

「スマホって、すばらしいよな!」

 あれ、李華なんで感動してるんだろ?

「そ、そうですね」

 雅ちゃん、ビックリしてるよ?

「目的地までの地図がでたり、トマトの育て方なんかもすぐに調べられるし」

「そ、そうですね」

「もう李華ったら、私のお爺ちゃんみたいなこと言って。雅ちゃんも困ってるよ」

「そんなことないよな? それで頭もアンテナみたいにしてるんだから」

「違います!!」

 キーン・コーン・カーン・コーン……。

「先輩、私行きますので」

「うん、じゃあね」「じゃあなー」

 チャイムが鳴ったので、雅ちゃんは行ってしまった。

「スマホに感動するなんておかしいと思ったら、髪型をからかうためだったのね?」

「いや……べつに……」

「私たちも教室に戻りましょ」

「ああ」

 急いで教室に戻るのであった。

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