第27話*これが任務*

 翌日改めて、リカと私は揃って神殿に呼ばれる。

 実家で一夜過ごしただけではリカの機嫌も直るはずはなく、今朝から今に至るまで口を聞いていない。

 昨日のリカは、大きな眼を見開き口悪く反抗するところはいつもと変わらないなと思ったが、部室であの赤髪を見た時は信じられなかった。それは同じ使命を帯びた天使と遭遇したからではなく、こんなことをどこでもやっているのかと思ったからだ。

 二人は黙ったまま横に並んでベート様の前に進む。

 呆れた素振りを見せたベート様はもうやり取りはせず、結論だけを述べる。

 そして先に『写し世で役割をしっかり果たせ』と指示を受けたリカは、聞いた途端に舌打ちをするといなくなってしまう。

 いったいどうするつもりなのか、どこへ行くのか、などと考えたが、リカの心配ばかりもしていられない。

 なぜなら私も『もう一度、写し世へ戻り役割を果たせ』と言われてしまったからだ。

 先に行ってしまったリカは私への指導を聞くことはなかったわけだが、同じようなフレーズでもリカとは意味が違うものであり、もっと深刻なものであった。

 それは、魔法を使うこともなく活動もしていないようだと睨まれ、任務を放棄していると受け取られかねない状況であったからだ。しかも本来は、三月で終わるはずだった派遣期間を延長してくれとまでお願いしたにも関わらず、それでも結果を出していないのだから尚更問題視されていたのである。

 あの時は、三年生が卒業してしまうと菜園部で活動をしているのが紗綾一人になってしまうので戻れないと思った。理由は天使と呼ばれているからではなく、写し世の人とできるだけ関係を持たないようにと一人でいた私に手を差し伸べた紗綾を、私が一人にしてしまうようで耐えられなかったからだ。

 何もできないまま時間をつなぐことに奔走していたら、新入生の小袖と李華が来てくれて、『よかった』『これなら大丈夫だろう』と思えたので、冬になり部の仕事も減ったところで帰還するタイミングだと考え、転校の手続きを始めたのだった。だから部室で李華が天使だと知ったときは、彼女もいつ引き上げさせられるか分からないと焦りが生まれた。

 それでも私の力では転校を止めることはできないのだから、ベート様の指導を聞いて正式な手続きでこちらに戻ることが取り消しになると分かったときは、心からよかったと思ってしまった。

 罰としての、やり直し命令なのにである。

 私は思う。魔法を使っても信仰にはつながらないと。何故なら魔法を使った瞬間、それは魔法ではなく現実になってしまうからだ。幸せなできごとであれ、嬉しいできごとであれ、それでは神によって与えられたものだと誰も気づくことができないはずだ。

 ……そうだとしても、私は従わないわけにはいかない。天使と呼ばれる者だから。


 アパートに戻った時にはすでに外は暗く、結露した窓に私の顔がぼんやりと映る。寒そうなので今から買い物へ行く気にもなれない私は、紗綾がお母さんと作ってくれた干し芋の残りがあった事を思い出し食べることにする。そしてもうひとつ思い出すと決心する。管轄が別だと聞き及んだサンタには、鍋敷きを頼もうと。

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