第22話*取らぬ狸の皮算用*
修学旅行から戻って最初の部活では、案の定の二人のお迎えが待っていた。
「部長、真空先輩、お帰りなさい。それでなんですが、へへ」
李華はニヤニヤしている。
「分かってるってお土産でしょ? 真空との共同出資で、ちゃんと二人にそれぞれ買ってあるから家に持って帰って食べな」
私がスクールバックを開けていると、李華と小袖がその手をかつもくしている。
「はい李華、はい小袖」
「「ありがとうございます!!」」
「帰って食べろとは、食べ物ですね」
「そうだよ、小袖。それで今日は作業があるからここで食べるのは無しってことで」
お土産で機嫌がいい二人は、素直に菜園までついてくる。
「今回は、B列に小松菜とD列に水菜なのですが、三回に分けて種まきする第一弾でーす」
「三回に分けてやるんですか部長? めんどくさくいような」
「でも李華、三回に分けてまけば、三回収穫できるってことじゃない。それに狭い範囲で作れるからと、一気に数を作っても食べきれないでしょ。だから三ブロックに区切って、順に作り収穫のタイミングをずらすわけよ」
「三回食べられるんですね!」
取らぬ狸の皮算用な小袖に、リスクに備え絶対ではないと忠告しておく。
「まあ、うまくいけばなんだけどね」
そして作業を始めると、李華がからかうつもりで言ってくるのである。
「修学旅行どうだったんですか? 栗山先輩と進展ありました?」
「栗山とは別れたよ。考えてみれば勝手に浮かれていただけで、向こうはそんなつもりじゃなかったのかもね」
私は軽く、返してみせた。
「なんだよー。折角、魔法を使って手伝ってやったのに」
重い空気になるかと思ったけど、李華らしく“なんだよー”って簡単に言って飛ばしてくれる。
「魔法? 魔法ねぇ。そうかも、魔法だったのかもね」
そう言われると確かに、そんな“ふわふわ”したものがあった。
(だから罰が当たったんだね……)
誰にも聞こえない小さな声でそうつぶやく。
「そんなことより作業しないと時間なくなるって」
私は話を戻し、ある程度育つまで虫にやられると全滅してしまう小松菜を守るため、支柱で作ったループに寒冷紗をかけることを忘れない。
作業を終え部室に戻ると、今回まいた小株狙いの水菜も小松菜も、三十日ぐらいで出来ると二人に教えておく。
それから、春に李華から散々言われたイチゴなどを作らない理由についても話しておくことにした。これまでも菜園部では冬休み前までに作業を終わるようにして、次は五月連休前の土づくりまであえて仕事をやってこなかったことだ。それは、正月は学校も休みで菜園を見る人がおらず、加えて三月四月は言うまでもなくバタバタするからであった。
ひょっとしたら寒い日に作業するのも辛いからと、伝統になってしまったような気もしないわけではないのだけど、そうゆうことらしい。
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