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「強がっちゃってまぁ」

 ぽてぽてと歩く物の怪は、半眼にした目で前方を見ている。対する昌浩は、足取りも軽く大路をかつしていく。

「別に強がってなんかないよ?」

「あ、そ」

 けろりとしている昌浩のこたえにたんそくして、物の怪は胸中でつぶやいた。

 百万のとげとげしい言葉を搔き消す、彰子のなぐさめか。ある意味無敵だ。

 もっとも、完全に重いものが消えたわけではないのだろうが。

 あれからしばらくみんを取った昌浩は、夜がけてから起き出し、おそめのゆうをかっ食らい、いつものように夜警に出てきた。

 考えてみたら晴明からは何も言われていないし、陰陽寮全体がおんりよう調ちようぶくために動き出したわけでもない。

 だったら、そのことはひとまず置いておいて、別の問題を片づけることに専念したほうがいい。

 ふたりが向かっているのは、右京のはしのほうだった。以前、おお蜘蛛ぐもきゆうしゆうを受け、おお百足むかでそうぐうした地域だ。

 あれから現れていないが、思わせぶりな言葉の意味が、どうしても気にかかる。

「百足とか蜘蛛とか、出てきてくれると手っ取り早くていいんだけどなぁ」

 ざくおおえて右京に入り、人家のまばらな道を行く。きように比べて右京はどうしてもさびれた感がある。くわしい理由はよくわからないのだが、右京は水はけがあまり良くなくて、住居を構えるのに適した土地が少ないからだという話を何かで聞いた。

 物の怪は、ふいにまばたきをした。

「…お前、少し背がびたか?」

「え?」

 思わず立ち止まる昌浩を、物の怪は後ろ足で直立して見上げる。

「ああ、やっぱり伸びたな。目線が遠くなった。しっかり育てよ」

 みよううれしそうな物の怪に対する昌浩は、え、そうかなぁ、と自分の頭に手を置いてみたりしている。物の怪は赤子のころから昌浩を見ているのだ。もはや父親の心境なのかもしれない。

 かみかくし事件も最近はぱったりとやんだ。都人もじよじよに落ちつきを取りもどしている。ひかえていた夜歩きを再開する貴族も多くなった。

 時々遭遇するなにがしかの貴族のぎつしややみまぎれてやり過ごし、適当に右京をはいかいしていた昌浩たちは、あるれ果てたやしきの前を通りかかった。

 無人となってから大分っているのだろう。ぼろぼろのかきは所々すきができていて、荒れ放題の庭が覗ける。夏にしげったすすきがぼうぼうで、その向こうにこれまた荒れた邸がかろうじて建っていた。

 なんとはなしに中を覗いた昌浩は、かたに乗って同じようにしていた物の怪がとつぜん全身の毛を逆立てたので驚いた。

 やや置いて、背筋に冷たいかたまりが落ちていく感覚を覚える。

 何かが、いる。

 あの邸の中に、何かが。

 昌浩はごくりとつばを飲み込んだ。おぞましい気配。ようかいではない。化け物の発するようとはまったく別の、すような気配だ。

 物の怪が垣根を飛び越えて中に入っていく。昌浩もその後を追った。

 れたすすきの間を分け入りながら、時々き出しのうでや首筋に微かな痛みが走る。すすきで切ってしまったのだ。

「あとで薬らないと…」

 ぶつぶつ呟きながらすすきの間をけ、昌浩は邸の中を注意深く探った。

 そこそこ広い邸だ。だが、しとみはぼろぼろで簀子にも所々穴が開いている。さえぎるもののないひさしにはほこりかれが積もっていた。

「ここ、だれの邸?」

 自分よりもはるかに長命で博学だとしようする物の怪に尋ねてみると、物の怪はけいかいしながらおくの糸をった。

「確か…ずっと前に、当時のみかどの不興を買ってせんされた貴族だ。なんていったかな、えーと」

「左遷されてって、飛ばされちゃったのか?」

「そのはずだ。その地でふんしたとかなんとか、争いに負けた者の末路は切ないねぇ」

 軽い口調でいるが、物の怪の表情はきんぱくかんただよわせてかたい。痛みを感じるほどの気配が、だんだん強まっている。

『………あの……男…』

 昌浩ははっと首をめぐらせた。

 しん殿でんの奥に、何かがいる。

 目をらすと、ぼうと闇にかぶほのじろひとかげが見えた。生者ではない。

「…れいか。ずいぶんと」

 化け物じみた気配を漂わせている。

 ものけんのんに呟いたとき、人影はぎろりとふたりをにらんだ。

 昌浩は思わず息を止めた。あせき出す。物心ついた頃から、考えてみたら悪意のある霊というやつに遭遇したことがないのを、昌浩はとうとつに思い出した。

 霊がその身から発し、まとわりつかせている気配は、おんねんと呼ぶべきものだ。すさまじいあつぱくかんと、身を切りそうなれいこくさをあわせ持ち、周囲の温度を急激に下げていく。

 はだあわった。足元からざわざわと寒気がいあがってくる。

 おんりようがぞろりと動いた。噴き出すえんの念が、実体を持ってうごめいているようだ。

『……おのれ…奴は…どこだ…!』

「奴…?」

 呟いた昌浩を、怨霊はぎっと睨んだ。しかし、がんはくぼみ、闇より暗いそこには眼球がない。空っぽの目からとめどなくしたたる、あれはなみだだろうか。闇と同じ色に見える。…血の、涙だ。

 怨霊は一歩一歩昌浩に向かってくる。骨ばった白い手をのばし、とがったつめで昌浩を指す。

「う…」

 まれたように立ちすくむ昌浩の足を、物の怪が思いきりんづけた。

「呑まれるなよ、晴明の孫」

「孫言うなっ!」

 いつものように反射的にり返し、昌浩は大きく息を吐き出した。からめ取ったじゆばくが解けたようだ。

 怨嗟のあまりの激しさに、昌浩はしゆくしすくんでしまっていたのだ。ただでさえ、今は対窮奇のこうしようれいりよくがれているのだ。そこにきて、この剝き出しの怨念をじかに受けたら、こうなるのも当然だろう。

 気をつけるべきだったのは自分だ。物の怪はちっと舌打ちした。あとで晴明に小言をもらう羽目になった。

「まぁ、自業自得か」

 昌浩には聞こえないように呟いて、物の怪はずいっと前に出た。せまってくる怨霊と昌浩の間に割り込み、せんとう態勢に入る。

 物の怪の全身がきんちようをはらんだ。白い毛並みが逆立つ。額に刻まれた花のような模様が、熱を帯びて発光する。

 その後ろで昌浩もいつもの調子を取り戻した。物の怪が口にした「晴明の孫」が効いたようだ。

 今日はを持ってきていないのだ。てつこうをはめた右手で刀印を作り、顔の正面にえる。

 ざわざわと風がいた。季節のせいだけではない冷気が邸の周辺をおおくす。

 構えた昌浩と物の怪をぎようしていた怨霊は、またもやうめいた。

『……あの男は…どこだ…!』

 昌浩はまゆをひそめて、怪訝けげんそうに怨霊を睨んだ。

「…あの男…? ここのあるじか…?」

「とっくの昔に死んでるぞ、それこそだいにおける勢力争いに敗れて…」

 物の怪が言いかけたしゆんかん、怨霊の放つ念がぐわりと広がった。激しいしようげきたたきつけられる。物理的な力を持つほど強い怨嗟が、昌浩と物の怪をおそった。

 とつのことで、ふたりはね飛ばされる。すすきが衝撃をいくらか吸収してくれたが、気休め程度だった。こわれかけた垣根に背中からげきとつする。寿じゆみようだった垣根はこらえきれず、音を立てて割れた。昌浩たちはそのまま道に投げ出された。

「……ってて…」

 背中と後頭部が痛い。顔をしかめながら立ち上がった昌浩は、あわててしき内に飛びこむ。昌浩をかんしようざい代わりにしていち早く態勢を立て直した物の怪が、すでに元の位置に戻っていた。

 それを見た昌浩は、据わった目で物の怪を睨んだ。

「……ひとをせいにしたな、もっくん」

「非常時だ、忘れろ」

 さらりと受け流す物の怪を、とりあえずっ飛ばしてやろうかと昌浩が本気で考えたとき、怨霊のごうとどろいた。

『奴は…内裏か!』

 怨霊のまとったころもひるがえる。まげわず伸び放題の長いかみが下から風を受けているように逆立って、まるであつのごとき形相を浮かべている。

 昌浩の心臓が、自分の意思とは無関係に撥ね上がった。すっと血が下がっていく。視界が闇に覆われて、昌浩はわずかによろめいた。

「昌浩!」

 気づいた物の怪が思わず声をあげる。昌浩はそのままりようひざをついてくずれかかった。

 慌てた物の怪の意識が昌浩に注がれる。その瞬間、怨霊はこおるほど冷たいれいだけを残し、その場からき消えた。

 地の上に手をついて、昌浩はかろうじてたおれずにすんだ。が、やみの中でもわかるほど、血の気のない真っ青な顔をしている。

「奴の怨嗟にあてられたか。立てるか?」

 問うてくる物の怪にうなずいて、昌浩はこごった霊気の中央を見た。そこにはもう、あのおそろしい怨霊の姿はない。

「内裏って…言ってたけど…」

 内裏とは、やはり帝のしよである内裏のことだろうか。

 だが、内裏は六月の火災で焼失し、現在再建中だ。誰もいない。後宮には人もいるが、後宮というくらいだから建前上「男」はいない。昼間ならともかく、この時間だから確実に。

 怨霊のさがしている相手が誰でも、後宮にその対象はいないだろう。

 大内裏はもともとあやかしの多い場所だ。悪意のあるものはいせきするための術が、そこかしこに結ばれている。

「入れはしないだろうけど…あれが、くだんの怨霊かな」

 昌浩の言葉に、おそらくな、と物の怪は頷いた。なるほど、あれほど凄まじい怨念を受ければ、ただびとはひとたまりもないだろう。事実、晴明のこうけいしやうたわれるこの昌浩が、怨嗟にすくんで呑まれた。

 自分の胸に手を置いて、昌浩は何度も深呼吸をり返した。一呼吸ごとに体が軽くなっていく。指先は相変わらず冷たいが、支障なく動く程度にはなった。

 立ち上がって辺りをわたしながら、昌浩は眉を寄せた。

「捜して、調ちようぶくしたほうがいいよね」

 一応修行している自分でもこうなるのだ。無関係の者がそうぐうして落命するような事態が、起きないとも限らない。

 が、物の怪は異論を唱えた。

「そんな青い顔で、調伏できるか、ばか。とっとと帰ってろ」

「ばかってなんだよ、ばかって! 大体顔色と調伏できるかどうかは関係ないだろう!?」

《安倍ていもどれ》

 ふいにひびいた言葉は、耳にではなく脳裏に直接届いた。

 昌浩と物の怪が同時に首をめぐらせると、視線の先に長身のかげが姿を現す。闇にとける長布をかたにまとった六合だった。おんぎようしたままずっとひかえていたらしい。

「あれほどのこんはそうそういない。だからまず体調を万全にしろと、騰蛇は言っている」

 昌浩はきよかれた顔で六合を見つめた。物の怪はくされた顔で明後日あさつてを向いている。六合は常の無表情で昌浩を静かに見返す。

「あれは怨霊と言うより、もはや化け物に近い」

 だから戻れと、物の怪は言うのだ。何の準備もなしにたいするのは危険だと。

 昌浩は物の怪をちらりと見やった。あさってを見ている物の怪は、後ろ足で首元を搔きながらそ知らぬふりをしている。

 そうしながら、六合のやつめ余計なことを、と心中でうなっているのだが、さすがにそこまで読み取る術を昌浩は持っていなかった。

「…わかった」

 頷いて昌浩は、物の怪の首をつかんだ。そのまま肩に担いで、きびすを返す。

「降ろせ、自分で歩く」

「やだよ、だって寒いんだもん。えりきになったってばちは当たらないだろ」

 顔を合わせないようにしながら、ふたりはえんりよなく言い合っている。

 六合は軽くまばたきして、ふっと息をいた。




 再建ちゆうの内裏。

 昼間は修理職のたくみたちがせわしなく動き回っているが、日が暮れると同時に無人となる。

 六月の火災で焼死した者も多いため、たましずめが行われた今も、匠たちは夜の作業をいやがるのだ。かがりいて作業をすれば、かかる日数も人件費もさくげんできるのだが。

「晴明殿どのが魂鎮を行っても、こわいものは怖いよなぁ」

 つぶやいて、年若い舎人とねりたんそくした。

 定刻ごとのじゆんかいは持ち回りが決まっている。毎刻しようが打ち鳴らされて、それから定められたしよを、異常がないか見て回るのだ。

 当代のみかどは現在、いちじよういんに移っている。帝をおむかえするために、せいりよう殿でん寿じゆう殿でんの再建がもっとも急がれていた。

 土台はできている。柱も立った。屋根もかれた。周囲を囲む簀子すのここうらんはまだ途中だ。

 松明たいまつを手に見回っていた舎人は、清涼殿の簀子にだれかが立っているのを認めた。

「誰だ?」

 彼はいぶかった。自分だって、役目がなければ夜の無人の清涼殿になど来たいと思わない。

 星明かりのみで暗いというのに、その人物は松明も持たずにぎようぜんとしている。なんとしんな。

 舎人は、かんにぶかった。でよく気のつく男ではあったが、生まれてこのかた、ちようじよう現象に遭遇したことも一度もなければ、ゆうれいや妖にったこともなかった。頭の上におにが乗ってひるをしていても気づかない、そういう男だ。

 彼はこしいた太刀たちに手をかけながら、じりじりと不審人物に近づいた。

「おい、そこで何をしている」

 低くじんもんしたが、不審者は反応を示さない。足元をじっと見つめて、ぴくりとも動かないのだ。

 よく見れば、不審者がまとっているのはほのじろかりぎぬだった。おまけにかんむりはおろかもかぶらず、のびたぼさぼさの髪を下ろしている。

 近づくにつれて、そのふうていの異様さが際立ってくる。松明をかざしながら、舎人は生まれて初めて、おぞましい気配をはだで感じていた。

 すさまじく寒い。不審者に接近するごとに、気温が下がっていくようだ。

 がたがたふるえながら松明をかざした舎人を、不審者はようやくかえりみた。

 松明に照らされた相手の顔を見て、舎人はひっと息をんだ。不審者の顔に、目がなかったのだ。青白いほおいくつも黒い筋が伝っていて、ぱたぱたとしたたっていた。

 こうちよくした舎人をぎろりとえ、異様な男は割れた声で問いただした。

『…ここに…座する者は…!』

 帝の昼の御所である清涼殿を囲む簀子は、殿でんじようを許された者が控える場だ。その位置は個々に定められており、変わることはない。

 舎人はくちびるを動かした。声が出ない。のどが凍りついてしまっているかのように、呼気だけが出て、かんじんの声が。

 恐ろしい男は再度繰り返した。

『この場に座する者は…!』

「……ふ…」

 舎人は必死で声をしぼった。

「藤原…行成…殿だ…、 そこは、蔵人くろうどのとうの、座所…!」

 限界だった。

 舎人はようやくそれだけを口にすると、きようのためそつとうした。手からはなれた松明がからからと転がっていく。しばらく燃えていたほのおはやがて消えていった。

 藤原行成。

 その名を聞いたしゆんかんしつこくがんに青白いほのおがともった。

『……藤原…』

 そうだ。藤原行成。その名だ。どうして忘れていたのだろう、そのにくき名を。

 思い出した。

『待っていろ…!』

 男はにぃとわらった。同時に、全身から凄まじいえんの念がほとばしる。倒れた舎人を呑み込んだそれは、ぶわりと広がっていった。

 ようやく捜し当てた。

 藤原行成。待っていろ。このうらみを、このじゆを、その身で受けるがいい…!




 右大弁、蔵人頭をけんにんする藤原行成は、この日ていで書き物をしてからしゆうしんした。

 彼は内裏再建の責任者だ。進行具合を帝と内覧にちくいち報告しなければならない。

 先日じゆだいしたにようを迎えるため、ぎようしやの完成は急がれた。あるじとなるのは、行成を引き立ててくれる、当代一の大貴族、左大臣道長の一のひめだ。

 どうにか期日に間に合った飛香舎は、真新しいただよわせながら、新しい主を迎え入れたのだった。

 それでほっと一息ついた感はあるが、まだまだ完成にはほど遠い。

 彼の仕事はもちろんそれだけではなく、右大弁と蔵人頭としての重責もある。いささかろうまっている自覚もあった。

 いつもより早めにとこいた行成は、夜半過ぎに目を覚ました。

 おかしい。つかれているから、いつもはにようぼうが起こしに来るまで目を覚ますことはないのだが。

 ふと、簀子とひさしを仕切るが、大きくれた。御簾の向こうにはしとみが下がっている。その蔀戸が、きいきいと音を立てている。まるで、無理やりにこじ開けようとしているような、そんな音だ。やがて、上蔀がゆるゆると開き、風の吹きこむ隙間を作った。

 なんだろう。

 訝しく思った行成は、身を起こした。とうだいともそうかいなか思案しながら視線をめぐらせ、そのまま硬直する。

 やみの中に、誰かがいた。

 蔀戸の向こうに凝然と立ち、僅かに開いた隙間からこちらをへいげいしている。

 闇におおわれて、風体しかわからない。風がくと、われていない長いかみが生き物のようにうねった。

 行成は、苦いものが喉の奥に込み上げてくるのを感じた。今自分を取り巻く空気が、ぴりぴりと肌をすようで、ないあつぱくする。

 けんめいに吐き気を飲み下しながら、行成はそのかげにらみつけた。

 彼は、通常の人よりも少しだけ勘が良かった。あの白いものの姿を感知することはできないが、人死にのあった、ようかいが寄り集まる吹きまりのような場所に行けば、気分が悪くなる程度には。だが、妖怪や幽霊にそうぐうしたことはない。気分が悪くなっても、その場を離れればすぐに治まる。その程度だ。

 だから行成は、この日初めてりようを見たのだ。

 おそろしい影は、手をのばして蔀戸を摑んだ。ざわざわとき起こる冷気が、行成の周囲を氷点下にまで冷やしていく。吐く息が真っ白になった。肺までこおりそうな冷気は、そのまま内側から彼の体をむしばむようにうごめき出す。こらえきれない頭痛がおそってきた。がんがんと、内側からこめかみをつらぬく痛みが絶え間なく生じる。

 声も出せない痛みに、行成は頭をかかえたままたおれこんだ。言葉にならないうめきが、彼の唇かられる。

『……許さぬ…許さぬぞ…!』

 地をう声音は、苦痛に喘ぐ行成の耳を素通りしていく。

 その姿を見下ろして、おんりようは血のなみだを流しながら嗤っていた。

『苦しめ…苦しめ…!』

 まだ足りない。足りるわけがない。お前は生きている。

 お前のせいで、この身はほろんだ。どれほど憎んでも恨んでも、き足らない。

 苦しめて、さいなんで。そして。

『満ちた月がおとろえていくように、貴様の命をけずってやろう…!』












続きは本編でお楽しみください。

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少年陰陽師 禍つ鎖を解き放て/結城光流 角川ビーンズ文庫 @beans

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