第6話


「「あ、」」


きえちゃんから爆弾発言を受けた日の放課後、私は下駄箱で仲元と鉢合わせた。

ともか達のせいで、まともに顔を見ることができずに、ぎこちなくスニーカーを取り出す。

とりわけこの日は、日直だった私を残して二人は先に帰ってしまった。フォローしてくれる人がいないから尚更、ぎこちなくなってしまう。

「…どうも」

何も言わないのも変だと思ったので、とりあえずそう言ってみる。

すると向こうは、「は、はぁ…」となんとも情けない声を出して自分の靴を取り出しにかかった。

これ以上話すこともないだろうな、と思って急いで靴を履く。一緒にいても気まずいだけだろうし。

「じゃあ、ばいば…」

「あのっ!」

振り返って彼を見ると、耳まで赤く染まりながら、私を見つめていた。

「…よかったら、一緒に帰りませんか」

男の子、っていうより、男の人って感じの低い声。そんな声を震わせて、彼は言った。

「よかったら、ですけど」

と言って、目が下にそれる。

「いいよ」

私からそらした目は、またすぐに私に向けられた。

「私のうち、近いから、送ってって」


何でこんなことを言ったのかは、私にもわからなかった。

きっと、きえちゃんの話を聞いて、ちょっと興味が湧いたんだと思う。ちょっとだけ。

だから、私は元々そんなつもりはなかった。

そうなる予定もなかった。

そうなるなんて、一体誰が予測してただろう。


仲元は、ちょっとだけ驚いた顔をしていた。

でも、すぐにいつもの顔に戻って、「じゃあ、行きましょうか」と歩き出した。

私もそれに続いて歩く。

この日は、夕焼けがとても綺麗だった。

「仲元くん、何で敬語なの?」

「え、あ、何となくです」

「タメ口でいいよ、同級生だし」

「そ、そーですね…」

会話らしい会話は、あまりしなかった。

お互いの自己紹介すらもしなかった。

私の家は、学校から歩いて10分のところにある。だから、この時間もすぐに終わるはずだった。

うちの前まで来て、彼は私を振り返った。

「じゃあ、ここで」

「あのさ、」

今日は家族は誰もいない。

まるで、ドラマみたいだなぁ、なんて思う。

こうなったのは、きっと、きえちゃんの話と、夏のせい。


「私とセックス、してみない?」






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