第14話 来客
五番対隊長、マルコ・デーチス。その名を知るものは多いが、その実、具体的に彼らのことを説明できるものはいない。彼らについて、その姿を戦場で見た者が言うには、『彼らが来て、瞬きをしたら戦いは終わった』。その一言に尽きる。
聖イデア騎士団について、その内情に詳しいはずの僕ですら、彼ら五番隊については知識はそれと同じ程度しかない。
「おいおいマルコ、ライをいじめてやんな。その能力をそんな風に始めて見るのは心臓に悪いだろ」
目の前の手のひらを条件反射のように掴んで握手している僕らの隣でガリレオ隊長がため息混じりにそう言った。
「お前のも初見は怖いよ」
「俺はいいんだよ」
不満げに口を尖らせるマルコに苦笑いを浮かべ、ガリレオ隊長は話を続ける。
「とにかく、彼を正式に騎士団に入れたくてな。その手続きをしたい」
「いいぜ、ついてこいよ。案内してやる」
歩き出した二人の背中に続くダリアさんたちに少し遅れて僕も続く。駐留所の半ばに着くと、僕らの後ろから誰かが駆けてきた。
彼らはそのまま僕らを追い越すと、片膝をついて声を張り上げた。
「マルコ隊長、そこの少年に会わせろとの命を受け、お連れしました!」
「ん、ご苦労。エリック、エイブラムス」
マルコはそう言って振り向いた。他の面々もさっと振り向き、膝をつく。
「えっ」
「ご無沙汰しております」
ガリレオ隊長が僕の背後に意識を向けていることに気づいた僕が振り向くより早く、その人物は僕の頭を掴んで乱暴に撫でた。
「ザルファリオ・ジョーカー殿」
「あぁ、久しいな。ガリレオ、それにマルコ」
ようやく手から開放された僕が見たのは、数週ぶりに見た父の笑顔だった。
「無事で何よりだ。我が息子よ」
なんと答えればいいのか、分からなかった僕は曖昧に頷いて視線を逸らす。
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