第569話 変質者.3
オレがその人達に気が付いたのは、レーニォをラビから引き探すことに成功してホッと息を吐いたときだった。
そういえば、ラビに間違って攻撃を仕掛けたときに感じた気配は三つじゃなかったか?
「!」
そう思って、曲がり角の方に目をやると、とてもとても懐かしい双子と目があった。突然の攻撃に合わせてレーニォの怒りの鉄拳により怯えて出てこられなくなっているらしい。
双子は髪が僅かに伸びたくらいで、特にこれと言った変化は見られなかった。
強いて言えば、服がだいぶ簡素な作りのワンピースみたいなものに変わっていたが。
「……ライハ?」
恐る恐ると双子のうちの一人、ウコヨが声をかけてきた。
「お久しぶりです。サコネ、ウコヨ。あの時は助けてくれてありがとうございました」
『ましたー!!』
あの時は記憶がボヤけているが、助けてもらった(ような気がする)。
「いやぁー、いいってー、チョコのお礼だよー」
「漫画もねー」
「てか何この子みっちゃ可愛い」
「もふってる」
わさわさと双子がネコを撫で回している。
「ところで、なんでお前ら此処に?」
わんわん泣きながらしがみついているレーニォを引き摺りながらラビが訊ねてきた。
「それが、」
一通り簡潔に説明をすると、ラビは成る程と頷いた。
「アーリャが言ってたのはお前らの事も含めだったのかな。ったくちゃんと説明してくれよ、毎度毎度言葉が足りないんだッつーの」
「で、そのアーリャさんは何処に?」
見当たらないが。
「こっちも探しているんだが、見付からないんだ。お前らもそうなら、ヤバイな……」
「自力で防御結界でも貼って隠れていれくれれば良いんですが」
「だな」
シラギクとニックが苦虫を噛み潰したよな顔で言う。此処は普通の人間ならば即死レベルの最悪な環境らしいし。
「……、で、その。ちょっと質問していい? ラビくんはどっか具合悪かったりしてるか?それとも防御結界貼ってるとか」
「? いや別に」
不思議そうな顔するラビに代わり、双子がネコを抱きつつ答えた。
「なんかこいつ魔力の影響受けてないっぽいんよ」
「どーゆー理屈か知らんけど。今んところなんの変化もないからね。便利っちゃあ便利?」
その答えにニックは「なんとなく理由は察せるが」とラビを見て言う。
オレもラビの魔力の流れが正常じゃないのは分かるが、それなのに異常が無いってのは不思議だった。だが、むしろ流れが正常じゃないから相殺しているんじゃないかって気もしてきて、今んところ問題が無いのなら手間が掛からなくて良いか、と納得した。
問題が出たらそんときに考えよう。
幸いにも外にはザラキがいるし。
「そんで、ラビは出口探してたん?」
「いや、俺はこの城の結界を壊すための核を探してた。外核は全部破壊したんだが、中心点の核みたいなのがどうしても見つからなくてさ、おまけに屋根裏から出たら部屋がさっきと違ってるわー、双子も『なんじゃこれ』しか言わないしさー、途方にくれてたところ」
「え、嘘もうラスト一つなの?…やべえ…」
前から思ってたがラビ有能だよ。見習わなきゃ。
爪の垢でも煎じて飲めば良いのか?
「じゃあ取り敢えず着いてこいよ。固まってた方が生き延びられる率が高くなる」
「うんうん」
「そうします。ほらいい加減離れろよ兄貴」
ノルベルトとガルネットが再びレーニォをラビから引き剥がす。顔が大変なことになっていた。
「?」
ふと、キリコを見れば何故かアウソを盾にして後ろの方にいた。盾にされたアウソは困り顔である。
「どうしたんですか?」
「………あの子慣れるまではしばらくアウソ盾にするけど気にしないで」
「?? はぁ、わかりました」
なんだかよくわからんけど、頑張れアウソ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます