第479話 裏の者.2
地面に降り立ち、うわぁと、思わず口許を手で覆ってしまった。
クレーター状に抉れた地面に突き立っていたものは、見るからに禍々しいモノに守られていた。いや、守られているんじゃない。これは、獲物を探しているんだ。
「な。凄いだろ?」
アウソが離れたところからネコの喉元を撫でながら言った。
確かにこれでは近付けない。
目視するだけで、恐怖が沸き上がってくる感じがした。
しかし、なんでこんな事に。
手を伸ばせば、剣の周りで蠢いていた黒いのが一斉にこちらを向いた。こええ。
どうやら、一定の距離から中に入ると襲ってくるようだ。
「何したの。あんた」
ちょっと離れたところからキリコが訊ねてきた。あまり近づきたくないものらしい。ちなみにその横にはカリア。以下同文である。
「何したって言われても」
特に思い当たる事はない。
悪魔を落とそうと、投げただけだ。全力で。
『早く抜かないか。日が暮れるぞ』
グレイダンに急かされて、慌てて手を伸ばす。すると、黒いのが一斉に襲い掛かって来た。が、オレの体に触れる前に胴に巻かれたものに強く引っ張り戻された。
『待って、これ、ネコ知ってる』
「ネコ?」
『なんの準備もなしだと、そのまま囚われて閉じ込められる』
「え"っ!!?」
ストンと、地面に下ろされ、ネコがオレの前に立った。
ゾワゾワとネコの周りを黒いのが取り囲もうとしているが、距離が足りないのか済んでで止まっていた。
それでも諦められないのか、さらに体を細く鋭利にして距離を稼ごうとしているが、ネコは届かないことを知ってか、その場から動かずにこちらを見た。
『ライハ。これ、呪いだよ』
「呪い?」
聞き返せば、うんと頷いた。
『ライハが作り出した呪い』
「オレが作り出した?」
どういうことだ?オレはそんなもの作り出せるほどの力も知識もない。ましてやなんで自分の使う剣に呪いを掛けるというのか。
『正確には、そうだね、今ネコの胴体に突き刺さっている棘に対しての呪い。悪魔に対して、取り込み閉じ込めようとしていた呪いが目的を達成できずに暴走して、近くにあるもの全てに手を伸ばしている感じかな』
「いやいやいや、待ってよネコ。オレが呪いなんて作れるはずないじゃん」
そう言えば、ネコは、ネコらしからぬ顔をしてこちらを向いた。
『呪いって、誰でも生み出せるものなんだよ』
誰かの影が重なり、思わず唾を飲み込んだ。
『でも、普通は呪いの核を生み出せても、効力を発揮するだけの魔力が無いんだ。でも、魔力がある人が、本気で、それこそ全身全霊の思いで怨みを、願いを込めれば、それは呪いになる』
軽く頭痛がする。
なんだ?誰の記憶だ?
『ライハ、ラビを連れて行かれるときに、何を思って剣を投げたの?』
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