第473話 絶望の淵で.3

防衛軍前線部隊が全滅。


その噂を聞いたのは、順番が来て、ノーブル首都に新設されたゲートを潜ってすぐだった。

号外号外と、ほら拾えとばかりに乱雑に撒き散らされた新聞を手にとって見て、手の震えが止まらなくなった。


淡々と記されている前線の惨状、たった一度の攻撃である部隊が辛うじて生き残ったが、それも追撃によって壊滅させられたのだと言う。最後まで耐えた部隊名は遊撃隊、別称真撃隊、しかしその真撃隊も生き残ったのはただ一人だけ。


「……っ」


「レーニォ……」


「嘘や、嘘や嘘や嘘や!!!!」


レーニォは新聞を投げ捨て踏みつけた。悪い冗談だ。書いて良いことと悪いことがあるだろう。


しわくちゃになった新聞の側でこれは嘘だと呟くレーニォの隣で、ノルベルトが新聞に乗った写真を見付けた。真撃隊の紹介だろうか?

大分遠くではあるが、剣を掲げて突撃していく部隊が載っていた。














あれから何日経ったのか覚えていない。

時間が朧気で、夢の中をさ迷っているような心地だった。


出された食事を口に運んでも、味が無く、しかも胃が受け付けないのか戻してしまい、いつの間にか食事を摂らなくなった。なんとか水はギリギリ飲めるものの、油断をすれば噎せてしまって咳が止まらなくなった。


ネコが心配そうに話し掛けてきても、言語が理解できない。


カリアさん達がいたと思ったんだが、関係者立ち入り禁止といって追い出されたんだったか。なんで此処にいるんだろうか?ルキオに居るんじゃなかったのか?幻か?


そういえば最近ルキオの鞘達から連絡が来ないな。何でなんだろう。


ひとまずやることをやらねばと、軍の上層部の連中とエドワードさんに起こったこと全てを報告した。ちゃんと話せるだろうかと不安はあったが、口は勝手に動いて淀み無く報告出来ていた。やればできるらしい。


けれど、その間、エドワードさんのオレを見る目が気になった。なんとも言えないあの表情。

もしかして、いや、たぶん近いうちにオレの処罰が下るのか。そりゃそうか、判断ミスでとんでもない数の兵力を失ったのだから。


罰を受けて当然だ。


本当は自らをなんとかしてやりたい気持ちはあったが、そうしようとすると体が勝手に動かなくなる。犯人はエルファラなんだろう。


罪悪感に押し潰されそう。

こんなとき、カリアさん達なら、どうするんだろうか。


「……………、──!!!」

「───!!!」


「?」


廊下が煩い。


苛立ちを押さえる気も無いのだろう。怒気を含んだ足音がどんどん近付いて来ていた。


「ライハ・アマツーーーッッ!!!!!」


バァンッッ!!!とドアが激しく開けられて、壁に叩き付けられた。


ネコがビックリしてオレの前に立ちはだかり警戒をしている。


誰だ?

いやまて、聞いたことある声だ。


顔を上げ、未だに興奮冷めやらぬ様子で肩で息をする人物に視線を向けた。


四人ほどの人間を引き摺って此処まで来たのか、各所に人をぶら下げながらこちらを睨み付けるその人を見た。よく日に焼けた青年だ。筋肉が良く付き、第一印象はきっと好青年。だが、今は、顔は憎悪に歪み、今にもオレに殴りかかってきそうな程に激怒したレーニォが、そこにいた。

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