第463話 虚空を見る.13

「…空色がよくない」


「空色?」


ラビの言葉で見上げると、土ぼこりに紛れて空を黒い雲が横切っていた。

雨が降るかもしれない。


ホールデン戦が始まって一月近く雨が降ってなかったが、そろそろ酷いのが来るかも。戦線を大きくホールデンの方へと押し込み、もうそろそろ首都へと到達しそうと言うとき、イリオナへと迫っていた魔物が進路を変え、全ての戦力がホールデンへと向かっていた。

その為、今オレのいる付近は人と悪魔の全力戦で見たまんま地獄と化しているが、悲しいかな慣れとは怖い。日常と化してしまっている。


といっても向こうも余裕が無いらしく、悪魔の介入が激しくなっていき、地形が変わる大乱闘状態で人の一部が突然降ってきては結界にぶつかって弾かれている。


前戦メンバーも入れ替わりが激しく、既にオレ達以外の部隊は残らず変わってしまっていた。


そう分かるのは、いつからそうなったのか記憶があやふやだが、エドワードから電報のごとき短い定時報告で第一期、第二期と装備の色、模様を変えてあると伝えられたからである。


ちなみに第一期は赤。今は第八期で青。


ちらほら紫も見えるから、多分次の第九期の連中もいるのだろう。


装備もガンガングレードアップしており、ついに戦車擬きも登場した。速度はオレ達よりも劣るが、何せ前方向盾なんで、精神的に“まだ”安定して戦えるらしい。今もドンドコドンドコと空に向かって魔法弾撃ってるが、オレ達に当てるなよと常に思ってる。

一度慣れてないからか、着弾付近にいたどっかの部隊が飛んだからな。


そういえば、オレ達に習い新しい遊撃隊がいくつか現れているらしい。そいつらには名前がついていて、早そうな名前で羨ましいと思ったのだが、つい先日オレ達の遊撃隊にも名前がついていたことが判明。


「…し…しんげき…たい……か」


「いえ、遊撃隊です」


死にかけで看取った兵士がオレ見て呟いていたの、名前間違っているって訂正したんだけど、今更ながらに恥ずかしい。しんげきたいって、オレ達の名前でした。漢字まだわからんけど。


ところで、話は変わるけどネコの様子がおかしい。

例の神具を渡した後らへんなんだが、突然戦い方が変わった。


今までは獣の戦い方だったのが、うまく言えないが、人間味を帯始めたのだ。


そして時折戦場を見回し何かを呟いていて、その瞬間、何故だかネコの中に知らない誰かを感じる。


誰かといえば、エルファラがようやく立ち直り初めてオレの視界を通じて危険を教えてくれるようになった。ついでに魔法も。お陰で他の部隊の助けに入ることもできるようになっている。もうすぐ首都突撃なのだ、攻撃要員は多い方が良いに決まっている。


「雨が降ったらすぐさま攻撃魔法を切り替えて、相手の足止めと、うちの足場確保を─」


── ライハ!!!上空から広範囲攻撃!!!全力結界を張れ!!!!


「!!!」


エルファラの意識が危険を発し、視覚が切り替わって上を向く。


雲の上に高濃度の魔力を感知した。

オレは知らないが、エルファラから伝わる焦りでとんでもないものと分かった。


「総員!!!頭上に強力な結界を展開させろ!!!早く!!!!」


「!!」


キュウと何かを引き絞る音が聞こえ、次の瞬間空が白く染まっていた。

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