第464話 虚空を見る.14

初め、それがなんなのかが分からなかった。

白い線が弧を描き、空間が歪んでいる。その中央にある白い点が肥大化していき、白い光が攻撃なのだと悟るまでは数瞬の間しかなかった。


『氷』


「!」


通常のものと重ね掛けして跳ね返しの結界を展開しようとした瞬間、ネコの尾がオレの腕に巻き付いて魔力融合を果たした。


展開したのは結界ではなくとてつもなく大きな氷のドームで、は?と声に出そうとした頃には光が氷に接触をしていた。


──ジュウウウウウ…。


もうもうと白い煙を上げながら溶けていく。ほほを掠める熱気に、あの光が熱の塊だったのかと理解した。


危なかった。こんな高温の攻撃、直に結界で受け止めてたら蒸されていたかも。でもなんでネコがあの攻撃の事が分かったんだろう。


『不死鳥だ』


── フェニックスのサラドラか。厄介なのが来たな。


「……めんどくさいの来たか」


幸いにも氷の壁半分で攻撃が止まったが、次食らったら終わりだな。というか、何故エルファラはともかくも、ネコが知っているんだ?


『あいつ、太陽を背中にしている限り魔力つきないからガンガン撃ってくるよ。早く、今度は結界を混ぜながら防御して』


「ソーラーパネルかよ!」


「おい!なんだよあいつ!ネコは知ってるのか!?」


「みたいだ。長話は出来ない。エルファラの情報によると、あいつの攻撃は結界で防いでも熱でやられるから、オレの氷に重ねるようにして強度を上げるよう指示をしてくれ」


「分かった!」


『またくるよ!』


ネコから魔力が流されてくる。それに違和感を覚えるが、今はそんなこと気にしている場合じゃない。


さっきよりも密度を高く、厚く、温度を低く。


思い出せ、雪崩に巻き込まれたときを。

魔法は関連するイメージを鮮明にすればするほど強くなる。


── 周りを気にするなよ、今んところ狙いはお前達だけだから。


「?」


ちょっとよく分からなかったが、とにかく集中しろということなのか。


上空の光が増す。


光が膨張して襲い掛かってきた。轟音と白く曇る視界をカバーするために視覚を切り替え狙いを定める。粒子の渦の向こうに鳥のような影を見付けた。

かなり高いが届くだろうか。


「──結界23枚損傷」

「補充が追い付かない!!」

「いいから踏ん張れ!!」


攻撃が止まる。


今だ!!


氷に纏わせていた魔力を変換し、雷を上空の敵に向かって放った。


光の輪が揺らぐ。避けられたか。


「!!!」


間髪入れずに連続で攻撃が降り注いだ。先ほどのより威力は落ちだが、結界を修復する時間がない。

跳ね返しの結界を展開しても押し負ける。


「ぐっうううう!!!」


地味に辛い。


ネコから魔力を流されていなかったら結構ヤバかったかもしれない。それほどあの攻撃が強い。


『…なんか、嫌な予感がする』


ネコが不吉なこと言い出した。





『まどろっこしい!!!みんなまとめて焼け消えろ!!!』






天からそんな声が聞こえたと思ったら、光の輪がグニャリと歪み、魔方陣が現れた。人の使うものと違う。だけども、何処かで見たことのあるそれは空を覆い尽くした。


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