第462話 虚空を見る.12

忘却の幸玉。


その名の通り、記憶を変えたり消したりする神具。

だったはず。


記憶が曖昧なのは手に入れたとき、こんな神具はしっかり隠しておかないとと、布でグルグル巻きにして奥底へと仕舞い込んでいたから。

ぶっちゃければ、見つけるまでこいつの存在忘れてたし、いつどこで手に入れたのかも覚えていない。


どこで見付けたんだっけ?


エルトゥフの森でだっけ?

いや、そこで見付けたのはこの危険な相打ちの神具だったはず。


色がくすみはしたが、未だに神具は健在でそこにある。


使わないがな。

こんなもんいつ使うんだ。


「ネコー」


『ん?』


猫座りしていたネコが顔だけ振り替える。可愛い。


「はい。あげる」


『プレゼント?』


「プレゼント」


『やったぜ!付けて付けて!』


首輪に付けてやると、いい感じに鈴のようになった。

紐で固定だから落ちないかとても心配。


「調子はどう?」


『ちょーし?』


「何ともないならいいんだ」


もし付けて変な感じがしたら即外そうとしていたから。


ネコが寝たのを確認して、立ち上がる。

さて、ラビを探して明日の確認をしないとな。















『作戦はどうか?』


『いたって順調』


ジリジリと炎が燃える。

光彩魔法の光は暗闇に慣れた目には辛く、部屋の明かりを全て火に変えた。


『ただ、例外がいるようですが』


『ああ、例の』


皿から肉を取りだし、食む。

溢れだす肉汁を啜りつつ、歯で肉を引き裂き噛み潰した。


『あれはいけないな。仲間にできれば良かったが』


『はははは、無理でしょう。中にエルファラ様が居るんです。我らを心のそこから憎んでいる筈です。決して仲間にはならないでしょう』


『そうか。なら、徹底的に潰さなければならないな。中身がエルファラ様でも、体は違うのなら、事は簡単だ』


フォークを肉に突き刺す。


『奴に絶望を味わわせてやればいい』

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