第452話 虚空を見る.2

異変が起き始めたのは、それから約二日後のことだった。

それはよく晴れた昼頃で、突如地平線に近い空に一直線に無数の魔方陣が現れたと思えば、それが一気に膨張した。



光が瞬き、拠点にした街の結界に衝撃が走り大爆発を起こした。










「吃驚した!!え!?何!?攻撃!?」


グラグラと激しく建物が揺れ、エドワードに向けて作成していた報告書が舞う空間で、爆音と揺れに驚いたネコが目を丸くして飛んできたのをキャッチして魔力関知してみると、遥か遠くに大量の魔力が迫って来たのを見付けた。


とうとう来たか!


「ライハ!」


扉を開けてラビが武器を手にやって来た。

やっぱり襲撃のようだ。


「第二波に備える指示を!!」


「オーケ!任せろ!!」


ラビが走っていくのを見送るやいなや、オレも黒剣を掴み飛び出した。


「ネコいつまで吃驚してるんだ?」


『ちょ、ちょっとびっくりしただけだもん!!』


戦闘中の爆音には慣れたが、未だに不意打ちのものは凄いビビるらしい。


「ほらほらいくぞ!!」


『分かってる!!』


腕から降りて、城壁へとやって来ると、地平線から見たこともないものが迫ってきていた。


銀色の甲殻、無数の脚、無機質な目、一山はありそうな体躯が横一列に並び、グングンと近付いて来ていた。例えるならば、そうだな、巨大な団子虫かな。


だけども、楽観視は出来ない。何故ならばその魔物は現在東側で暴れまわっている魔物と類似していたからだ。甲殻は硬く、攻撃が効きにくい。


あれを止める手段は全ての脚を落とすか、仕留める他なく、出来なければ巨体で蹂躙されるのみ。


「…最悪だ。さいっこーに笑えないぜ」


「どうした?なんか見えたか?」


隣でホークアイを発動していたラビが引き吊った顔で呟いていた。


「あの虫の魔物の背中に悪魔が乗って、こっちに向けて魔法発動しようとしてやがる!!!総員!!!結界を展開!!!!」


いい終える前に、虫から光が飛んできて再び結界に接触して大爆発を起こす。いくつかの貫通した光が建物を数件軽くぶっ飛ばし、人が飛んだ。


「衛生兵!!!」

「誰か担架持ってこい!!!」


攻撃力が高い。

隣の街もここと同じように煙が上がっていた。


防御力を上げた結界でも一発使い捨てしか出来ないのか!

あの距離でこの威力だ!あれ以上近付かれたら結界なんか全て貫通して街ごと消えるかもしれない!!!


「ネコ!!ちょっと魔力貸して!!」


『え、うん!』


尻尾が腕に巻き付き魔力が送られてくる。ネコもエルファラと融合が強くなったからか、それとも対抗してなのか魔力量増えたよなぁ。


「よし、上手くいくか…賭けだけど」


久し振りの弓を取り出し、構える。

矢はない。


普段は雷の矢を放つときは弓まで形成するけど、今回はその魔力さえ惜しい。


指先から雷が迸る。


目の前で再び虫に魔力が集まるのが見える。



「せやっ!!」



── チッ!



軽い音を立てて光の矢が線を引いて一直線に飛んでいく。それと同時に虫からも光が飛んできたが、近くにあった光をぶっ飛ばして虫の体に着弾した。一瞬のうちに電流が走り、虫が停止する。


それも両隣合わせて三匹。


儲けた。


──が。


「………嘘だろ?」


虫が退いた向こう側に沸く真っ黒な影。

その全てか変異体だった。


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