第448話 抉り取り作戦.4

魔物、ドラクニルの最高速度は人族の駿馬を凌ぐ。前方を駆ける駿馬の脚を喰い千切り、腸を引きずり出すのだ。


たが、今追い掛けている駿馬はただの駿馬ではない。


重装備をしていながらもこのドラクニルの速度を上回っているのだ。

面白い。それでこそ殺り甲斐があるというもの。


『ハァッ!!!覚悟しろ!!!』


二度も無視をされて怒りはしたが、もうそんな感情は消え去った。何故なら、前方に感じる強い魔力に気が付いたからだ。


魔力の質から言ってコチラに近しいが仲間ではない。ならば敵と言うこと。


そういえば上から裏切り者がどうとか言われていた気がするが、今はそんなことどうでも良い。


強い奴がいる。ならば其奴と戦いたいと思うのが漢というものだろう。手加減などするつもりなど無い。はじめから全力で攻撃させて貰う。


敵の駿馬の速度が少し落ちている。

先頭がこちらの仲間と戦闘に陥っているようだ。ならば好機だ。


『先頭のは俺の楽しみだ!!お前らは他の獲物と楽しんでこい!!』


部下に命令を下すと、リーデロは魔力を解放して、先頭の奴を挑発した。掛かってこい、と。

先頭付近にいる一人の角兜がこちらを見て、魔力を解放した。


受けて立つか。


牙を剥き出して笑うと、リーデロはドラクニルの脇腹を蹴って指示を出す、同時に魔法を発動すると視界が砂に包まれた。


リーデロの得意の魔法は砂潜りである。


海にいる鮫のように土中から獲物を狙い、襲い掛かる。後は駿馬をドラクニルの自慢の顎で拘束し、奴を地面に引きずり出して満足いくまで戦いを楽しんだあとに始末するだけだ。


いくら強いと言っても、地面に潜る相手に手も足もでないだろう。


リーデロの角から細かい振動により獲物の位置を正確に把握する。


真下まで来た。さあ、楽しもうではないか!!!




リーデロが勢いよく上昇していく。


奴はキョロキョロと辺りを見回している。今さら探しても無駄だ!食い付けドラクニル!!



── ガシンッ!!



ドラクニルの顎が閉じた。

何も捕らえること無く。


信じられん、魔物でもないただの駿馬がこの攻撃を回避しただと!?


しかも更に駿馬は後ろ脚蹴りを放ってきたではないか。


『ぐうっ!!?』


その威力は凄まじく、剣で受けたのにも関わらず、ドラクニルごと吹っ飛ばされた。一瞬だが、駿馬の蹄に魔方陣が浮かんでいた。


まさか駿馬にまで魔方陣を施しているとは思わなかった。


体制を立て直し、前を見ると、灰色の駿馬を操りこちらに迫る角兜が。叩き付ける魔力の量に体が一瞬怯んだが、心は歓喜した。


『ハッハッハァ!!!来い!!!』


武器を振り上げ、振り下ろした。

だが、それよりも先に黒い閃光が走った気がしたが、気のせいだったか?


気が付いたときには視界が明後日の方を向いていたのだった。
















「あっぶな!?セーフ!セーフ!」


地中に潜った奴が予想外のスピードで急浮上して来たものだから、危うく灰馬が殺られることろだった。しかし、だてに修羅場を潜っていない。

灰馬はオレが操る間もなく、間一髪で攻撃を避けたと思えば、ついでに蹴りまで放った。


その瞬間に、なんとこの灰馬、反射の魔方陣展開しやがった。


いや、確かに駿馬にも魔方陣組み込みまくった装備を着けてるし、 蹄鉄にも魔方陣仕込んでるって説明されたけど、いやはや攻撃用とは思わなかった。


でもそれを使いこなす灰馬も灰馬だけどな。


横たわる骸にすり寄る大蜥蜴に心の中で謝ると、他に襲い掛かってくるものが居ないか確認して、先頭を行くラビとネコを追い掛けた。

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