第449話 抉り取り作戦.5
第一部隊、突撃役の遊撃隊の猛攻により道を切り開き、マルコフと新しく配属されたスティーブの部隊が後ろについて神聖魔法の放出盾を持って着いてきてくれている。
強い魔物でも怯むのに、弱い魔物は動きが鈍くなっている。
部下たちも、先程の悪魔に付いていた手下達に襲われてはいたが、何てことはない。被害もなく切り抜けた。
作戦は順調だ。
(あとは、このまま囲み込んでいけば)
『ラビー!ライハ戻ってきたよ!』
進行方向の確認に、しばし飛んで貰っていたネコが報告してきた。
見てみれば、灰馬が魔物を踏みつけながらやって来ていた。あの灰馬も長くライハと付き合いがあるから、そこらの駿馬とはだいぶ変わっているよな。
「無傷か?」
「無傷だ!なんか地面もぐって来たからビックリしたけど、灰馬の方が上手だったよ」
灰馬がどうだと胸を張っているように見える。
『ネコも頑張ってるよ!』
「ネコにはいつも感謝してるって」
『ほんとにー?』
今でも攻撃をしてくる魔物を尻尾で蹴散らしながら会話をしている。ホントにこいつらと長くつるんでいると、感覚可笑しくなってくるんだよな。
「何笑ってんの?」
「何でもねーよ、仕事に集中しろ」
作戦は大成功だった。
丸一日掛けて予定していた範囲を削り取り、魔物を殲滅した。
勿論こちらにも被害はあったが、想定内に収まったので、大成功と言えよう。
それもこれも、戦場にいる奴等だけではなく、オレ達を裏からサポートしてくれている技術者達やその周りでバックアップしてくれている人達がいたからこそ、成功したと言えよう。
「お疲れー」
「支給食だ、ありがたく食べろよ」
夜営のキャンプを張り、辺りを警戒しながらも疲れた体を休ませる。
結界には神聖魔法を外側に放出しているからこちらには影響はほぼ無い。本当は内側に向けた方が他の人には良いのだが、なんせオレのこの呪いのせいで気を使ってくれているらしい。
それでも早く回復させるために、遊撃隊が陣地を構え、移動する範囲以外には神聖魔法を使っているようで、部下達が順番に回復しに行っている。
「オレもいつか恩恵にあやかりたいなぁ」
「…それいつも考えてたんだけど、即死とかそういう呪い掛けたら似たような感じ味わえるんじゃねーか?」
と、ラビが恐ろしいことを言い出した。
「いや、昔オレも思ったよ、それ。でもそれさ、失敗したら終わりじゃん。試してみる気はないよ」
「確かに失敗したらダメだな。じゃあ別の案か…」
ラビがまた考え出した。
良かった。強行する気は無いみたいだ。
「ライハさん、ちょっと良いですか?」
「はい?」
部下達が支給食の豆から作られた肉擬きを食べているのを眺めていたら、アーノルドがやって来た。
「今まだ神具の暴食の主を持ってますか?」
「え、何でそれ知っているんですか?」
確かにまだ千切れたけど持ってるよ。でも何でアーノルドが知っているんだろう。
「
「ユエさん今ギリスにいるんですか」
あの後、ついてくるかと思いきや、行くところがあるとまた旅立ってしまったユエ。確かに魔法使いなら、魔法が多彩なギリスにいた方が能力を発揮できるか。にしても、また使えるようになるものなのか。
「ええ、祖が現れたと国中が大騒ぎですよ。これからは更に進化した魔方陣で手助けが出来ると思います」
アーノルドが嬉しそうな顔をしていた。ユエさん、本当に凄い人なんだな。
「そういうことなら。お願いします」
ポーチから千切れた暴食の主を手渡した。性質が変わっても、また使えるならありがたい。
「ついでに盾も良いですか?」
「盾?真っ二つですよ?」
役に立つとは思えないけど。
「ふっふっふ。これはギリスの秘密なんですが、魔法を受けた魔道具や自然物は、受けた魔力の波長がしばらく残るんですよ。魔力跡って言うんですけどね。それを使ってちょっと解析しようと思いまして」
なんだかアーノルドが悪巧みしてそうな顔で笑い始めた。ここで悪巧みしているニックの顔が重なり、アーノルドもやはりギリス人なんだと思い直した。
「よくわかんないですけど、ノーブルの保管庫に入れている筈なので、どうぞ」
役に立つのならどうぞ。
「ありがとうございます。ではまた」
そうしてアーノルドは去っていった。
うーん、何となくギリス人がヤバイって意味が分かってきた気がする。
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