第447話 抉り取り作戦.3

作戦通りに灰馬を先頭として疾走する。視界は広い。兜の表と裏面に、目立たない範囲で魔方陣が彫り込まれ、外側にある魔方陣が受信した光景を、映像として兜の内側へと転写している。


分かりやすく言えば、超リアルなVRって感じ。


流石に頭の感触で付けてないみたいとは言えないが、戦う分には支障はない。


さすがはギリスからの横流し品だ。魔力の馴染みが良い。

後はパルジューナの魔方陣彫り技術者とドルイプチェの加工技術者の腕が頼りだ。


正直、ドルイプチェで良い思い出全然無いけどさ、腕は評価しているんだよね。


『ライハ!ネコが道を開くよ!』


「頼んだ!遊撃隊、突入する!!遅れるなよ!!!」


「「「オオオオオオーーー!!!!!」」」


シュリンと音を立てて、黒剣を鞘から抜き放つ。目の前に押し寄せる魔物の壁に向かって威圧を放つと、バタバタと近くの弱い魔物が意識を飛ばして転がり、後進してきた魔物が足を取られている。


その隙をついて、視界の端から黒い帯が伸びてきて、あっという間に前にいる魔物の胴が真っ二つになった。


その上に騎乗していた雑らしき悪魔達が前に投げ出され、後から来た奴に踏み潰された。


『人間共をヤれええええええ!!!!』


光の玉が飛んできて、それを反射の魔方陣を纏わせた剣先で弾き返した。

弾き返した先で大爆発で空へと舞い上がる塊。


それを合図としてか、四方八方から攻撃が飛んできた。


最早何の属性なのか判別できないほどのカラフルな玉が飛んでくるもんだから、思わず「たーまやー」と叫ぼうかと思ったほどだ。


「ここで脱落するやつは、訓練のし直しな!!」


「鬼かよ」


テンションが上がったついでにそう言えば、ぼそりと隣からラビの冷静なツッコミが入った。

しかしラビも早速突入するための魔方陣生成を始めている。


「せやっ!!」


剣を一振りすれば、剣の軌道上に反射の魔方陣が無数に展開され、飛んできた魔法を全て跳ね返した。

それでもこちらの攻撃を回避し向かってくる奴をネコの尾が撫で斬り、それすら突破して来たものはラビの魔方陣の餌食となって遥か遠くに吹っ飛ばされた。


ラビはとんでもない能力を身に付けていた。


簡潔に言うと不可視の魔方陣。

通常、魔力で描く魔方陣でも完成すればうっすら見えるものだが、ラビは得意の光彩魔法を駆使して、完全不可視の魔方陣を作り上げていた。

魔力の気配もない。


有効範囲は狭いが、何もないところから気配も無しに発動される攻撃は、はっきり言って罠だ。

魔力の見えない人からすれば意識逸らしの魔方陣も十分罠だが、ラビは魔力が見える者すら騙す。


こいつの成長が怖い。


「!! 隊長!!追い掛けてくるものがいます!!!数は20騎程ですが、先頭に巨大な魔力を持つ個体。雑ではない悪魔がおります!!」


「来たか!」


恐らく居るだろうなとは思ったが反応が早い。

後ろは神聖魔法の盾のグループで攻撃力が低い。足止めされては堪らない。


「相手をする!!誘き寄せてくれ!!」


「了解しました!!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る