第441話 コロリ.2

アレックスにメモ書いてもらう。

箇条書きで羅列したそれを見て、ニックの目が泳いだ。こいつ。肉しか食ってない。


「………おい」


「なんだい!?お説教なら聞かないからな!!もう俺は独り立ちしたんだから強力で純粋な魔力を作るために野菜を八割喰えなんてもう聞かないんだぞ!!だいたいそれは子供の魔力成長期間だけで、ギリスの奴等みたいに魔力が多い奴がヤギのようにもっさもっさと草を食んで暮らしているなんて大間が──」

「ストップストップストップ。言いたいことは山ほどあるが、一旦待て」


「…ぐ」


アレックスがそれならと口をつぐんだ。


昔から説教が大嫌いで、昔からどんなに言い聞かせてもそれを説教と判断してこちらが口を挟めないように話し出す。

こんなときだけこいつは喋るために頭も舌もよく回る。じゃなかった。そうじゃない。


てか、こいつヤギとか言ったか?

後で絞めよう。


「本当に間違いないんだな」


「間違いあるものか。俺が食べたもの忘れたことなんてあったかい?」


「ねーな。で、ここにあるこの一面の肉は何処で食ってんだ?ここの屋敷で食べてる訳じゃないんだろ?」


「そりゃもちろんさ!だってここの肉は柔らかすぎて、なんというか食べた気にならないんだよ。だからちょちょいと走って隣の店に通ってるよ。勿論沸いてる魔物も倒してだけど」


思わずため息を吐きそうになった。


ちょっと目を離すとこれだ。だが、気持ちは分かる。

元々一ヶ所にじっとしていられる質ではなかったから、現に待ちきれないと言ってノルベルトがレーニォとカミーユ、ビキン、ナリータを連れて出発してしまった。


いつものことながら協調性の無い。


しかし、今は置いておくことにして問題はこれだ。

この館で食べているものは俺も食べている。なのにアレックスしか異常が出ていないということは、あきらからに何処かでつまんできた肉が原因だ。


なんの肉だ?

変な肉を出すような店なのか?


「俺をその店に連れていけ」


アレックスが数秒固まった。そして胸元で印を切った。


「槍が降るかも」


このやろう。


「調査のためだ!!勘違いするな!!ったく、じゃなかったらわざわざお前の趣味の店に行くかよ」


「ハハハ、だよね!ビックリしたよ!書類見すぎて頭おかしくなったのかと思った。そういうことなら任せてくれよ!なんかやたら魔物多いけど、ちゃんと連れていくさ!」





















足元に杖を当てる。


「──高く低く、風に乗り飛翔しろ…《スウァロゥ・ルェミングス》」


足裏に魔方陣が展開し、太股までをしっかり包み込んだ。


首もとでピートンのニファが『ピルルル』と不安げに鳴いている。ということはこの方向は危険なものがいるということ。


「準備はいいかい?」


「いいぞ」


韋駄天を発動しているアレックスが言う。普段は駿馬か爬竜馬のレックスに乗るのだが、今日は急ぎだ。多少魔力を削ってでもスピードを優先する。

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