第440話 コロリ.1
「は?」
と、ニックが手元にある文章の意味が理解できなくて思わずそんな言葉が飛び出した。
書類にはこんなことが書かれていた。
混沌汚染した生物を口にした為に起こった中毒死。
此処のところ町の人達が体調が悪いという話は聞いていたが、とうとう死者が出始めた。それを忍び込んだデア達が手にいれた書類には、様々な検証結果が載せられていた。それが、上記だ。
混沌汚染?
なんだそれは。
さっさと報告を終えて移動したいのに、出来ない。これは俺が思っていた以上にややこしいことになっているらしい。
混沌汚染と聞いてすぐに出てくるのは黒斑の病だ。
あれは混沌属性の魔力を体内に吸収し、正常な魔力を汚染して体を壊していくものだ。通常は体に黒い斑模様が発生し、苦しみのあまり悶え苦しみ、最後は気が狂って暴走の後に力尽きるか、自殺をする。
それが、今回のものは違う。
長い間咳が続いたかと思えば高熱が出て、苦しみにもがいてころりと逝ってしまう。
病名、コロリ。
それがパルジューナを始め、ドルイプチェ、ウォルタリカ、ドーヴォへと広がっている。
亡くなってしまった人の親族らに許可を得て、調べてみると、体内が変異し、まるで魔力暴走を起こしたようになっていたのだという。
「あぁあー…、なんかお腹の調子が良くないなぁ」
「そんなこといちいち報告するな」
寝起きらしいアレックスがしなくても良い報告をしてきた。
「いんや、それだけじゃないんだよ。なんかさー、双子の共鳴も最近おかしくってさ。見てくれよこれ」
「だからいいって」
拒否しているのに無理やり見せてきた双子の共鳴を見て、ニックは驚いた。身代わりになる筈の人形がグチャグチャに歪んでいた。特に腹部なんかどろどろに溶けていた。
「気持ち悪ぃ」
うへぇと顔を歪ませるアレックス。
だが、ニックだけは食い入るように人形を見詰めた。
身代わりの人形は、文字通り
「ちょっ!なんだいいきなり!?」
突然襟元を鷲掴んだニックにアレックスは驚いた。
「お前の体と最近口にした物を全て調べさせろ」
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