第421話 前線予想地へと.3
ノーブルで待機命令が下り、オレ達遊撃隊は他の隊が到着し、準備が整い次第動けるようにしないといけない。
なので、殆ど実戦と変わらない超ハードな訓練をしている。
眼前でネコに苦戦を強いられている部下達を眺めながら、イヴァンの父、またはスライム親父ことアンドレイのスライム研究仲間であるリーオから珈琲を貰い啜っていた。初め名前が出てこなくて焦ったが、一旦思い出すとズルズル記憶が引っ張り出される。
「お久しぶりですね、イヴァンさんも此処にいるんですか?」
「いや、
「修行中なんですか」
「人間の婿入りなんて初めてらしいからな。クアブさんの元で、基礎知識から精霊の付き合い方、その他色々を叩き込まれている」
「大変そうですね」
「本人が頑張るって言ったからな。俺は見守るだけだ。それよりも君のが驚いたぞ!悪魔に対抗する武器を作ってるからある程度の情報は入ってくるんだが、名前を見て同姓同名かと思ったが、まさか本人が登場とは思わなかったよ。カリアさん達の姿が見えんが、まさか解散したのか?」
「今ちょっと訳あってカリアさん達は連合軍で戦ってます。でも解散はしてないですよ」
「そうか、西と東。双方に高ランクがいれば安心だな」
「誉めても何も出ませんよ」
苦いだけの珈琲から湯気が立ち上る。
「アンドレイさんは?」
「奴はスライム研究を再開してる。なんか知らんが、スライム達が面白いことになってるみたいでな」
「?」
面白いこと。なんだろう。
「集まって、別の生命体になりかけてて、それを研究中。固まって終わりかと思ったんだがな、土地のせいか半分程が生き残ってた。アンドレイの興奮がキモくてな、でも何故か長老も大喜びだった」
「すっげー見たい」
気になるどころの話ではない。今すぐすっ飛んで行きたいくらいだ。
「でも俺はそれよりも悪魔の甲殻に嵌まって、それを此処で研究して活用している。盾車あるだろ?あれに使ってる。どんなに熱しても壊れなくて丈夫だ。熱すると強くなる。ただ物凄い冷やすと強度が少し落ちるから気を付けろ」
「わかりました」
とするとオレが凍らすときは気を付けないとな。
「…………ところで、お前らまだ此処にいるよな?」
「? いますけど」
「良かったら俺達の武器や防具を使って訓練をしてくれないか?指定の以外の奴でも面白いのはある。俺達が試し撃ちするよりも、本当に戦場に行ってるやつらの方が、その、何処がダメとか改良出来そうな所とか分かるだろう?それを教えて貰いたい。この戦争で勝つために最善を尽くしたいからな」
さすが元々職人だけはあるな。上昇志向が凄い。
「わかりました。結構無茶な使い方もすると思いますがそれでもいいなら」
「ああ、ありがとう。すぐに責任者に伝える」
訓練内容。
単身突破。
オレが手にしているのは試作品段階の魔力を流し込めば鉄よりも硬くなる棒。巻き付くように魔方陣帯が彫ってあって、滑り止めにもなっている。というより、魔方陣を魔法角にしたり魔法円にしたり魔法帯にしたり。応用効きすぎだろ。回路さえ間違わなければ問題ないというが、よくわからん。
一応これは盾の元になるらしいが、魔力を際限無く流したときにどれ程強くなるのか、耐久性のチェックも兼ねてだ。
「さーて、ネコに負けてらんないぞ」
身体全体に魔力を張り巡らせる。
纏威だと射撃場が吹っ飛ぶ。魔法も同じ。かといって素だと動きに限界がある。ということで、シンプルに身体能力向上魔法だが、今回は発動方法を弄ってみて、通常の、身体全体に魔力を張り巡らせる方のも重ねて発動してみる。
今まで普通のが出来なかったが、ザラキのおかげなのかエルファラのおかげが、気付いたら出来るようになっていたので試してみる事にした。
オレのと違い、肉体酷使ではなく魔力量によって肉体と反射神経を強化するタイプなので、もしかしたら機関銃の嵐の中でもいけると思うんだ。
「隊長良いですか!?」
四方八方で盾と機関銃を構える隊員達が魔力を籠める。最近こいつら集中すると魔力を放ち初める。人間の成長って凄い。
「おーけー!!!行くぞ!!!」
体重を移動させつつ地を蹴った。
景色が後ろへと線を引いて伸び、360度から放たれた機関銃の弾がゆっくりとこちらへと飛んでくる。これは、すげえ。もっと早く気付いていればリオンスシャーレ南部戦もっと楽だったろうに。
でも仕方がない。この方法に気付いたのが昨日だったのだから。
「ふ…」
棒と弾が衝突して火花を上げる。
迎え撃つのは最小限に、だが、キチンと避けれるところは避ける。
──バキンッッ!!!!
棒の先が折れて回転しながら飛んでいく。だが、オレの手にはゴールにあったアイテムを手にしていた。
後ろの方で轟音と、盾に弾かれる音が鳴り響く。
「使えるなこれ」
身体に不具合はない。最高だ。
「くっそ!!隊長早すぎて駄目だ!!」
「なんですかその技聞いてないですよ!!!」
「一発くらい当たって下さい!!!」
後ろから隊員達の一斉ブーイング。
「少し前まで機関銃相手に苦戦してたから止められると思ったんだろうが、残念だな。オレだって成長するんですー!!」
「悔しい!!」
「次は止めますからねっ!!!」
そんな感じで訓練を続けていき、データも揃ってきた。
隊員達がネコを餌で釣ってどうやったらオレを止められるかを聞き出したり作戦を練っていた。今はオレ、普通に隊員に攻撃をしに行っているもん。素手で。
「……あの盾だがな。強度だけ増しても駄目だな。一転集中だと破られる」
「いっそのことこっちの式で破壊とか」
研究員の皆さんもペンと紙を持って結界の外で会議を開いている。
そしてギリスの魔術師さん。毎回結界の、張り直しありがとうございます。
そんな感じで二日ほど。集まってきた部隊も何故か訓練に参加して来て、きたる戦闘に備えていた。
「──え」
そんな中、トビアスの部隊が全滅したという情報が入ってきた。
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