第420話 前線予想地へと.2

ノーブル国はこの世界では珍しい科学を使って魔法の効果を生み出そうと研究している国である。


例えばこのトランシーバーモドキ。パルジューナの魔方陣とギリスの魔方陣結合の技術、煌和の精細にコンパクトさせる技術をドルイプチェで頑丈に仕立て上げているらしいが、解析図を見たところどうも移動の魔方陣を使って目に見えない程の雷を飛ばし、それを音の波に変換、その波を更に音として発生させてマイクから流す。切り替えのボタンで逆の変換を行ってまた飛ばすということをしている。


通常の魔方陣での送信だと、一人だけに一文一文飛ばすというめんどくさい事を行っていたが、これによって大多数に一斉に指示が飛ばせるようになった。といっても、大元の本機から限られた範囲しか有効範囲ではないが、ドルイプチェ産の頑丈なケースに保護されている事によって、内部の魔方陣が刻み込まれた歯車達が、余程の事が無い限り機能を継続してくれるという。


素晴らしきかな、魔法と科学の融合。


今はまだ無線機だけだが、そのうちケータイみたいなのもできる気がする。

でもその前に車とか欲しいけど、どういう技術の発達をしているのかよくわかんないけど、魔方陣を組み込める物だけどんどん発展している気がする。

その内、移動方法は駿馬だけど、ケータイを使って連絡をして、魔法弾が撃てる剣が普及したよくわかんない世界が来るのだろうな。


いや、確かにバイクとか良いなとは思うんだけど、正直オレの駿馬の方が速いんだよ。


「目的は?」


「遊撃隊です。防衛軍の指示で参りました」


「ああ!話は聞いています。どうぞ!」


防衛軍のバッチを見せながら言えばすぐに通された。


「…すっげーな」


隊員達がざわめいている。


そりゃそうだろう。ここだけ都市の発達の仕方がおかしいのだから。

中世と現代が融合してしまったような不思議な街は、パルジューナのように魔方陣と科学を融合させた魔法科学の結晶である道具があちこちに設置されていた。


ネコが尻尾で肩を叩く。


『ねぇねぇ、変なのが走ってる』


「変なの?……三輪バイクだと…?」


に似た乗り物。

動力どうなってるんだあれ。


駿馬に比べれば遅いけど、町中の路地を大荷物を持って行くのに便利そうだ。


「隊長、とても同じ世界の国とは思えません」


「オレも一瞬世界移動したのかと思ったよ。さて、本部に行くのにはどうすればいいのか」


そもそも街中で駿馬を乗り回していいのかもよく分からない。

門番に質問して、速度を出さなければ乗ってても良いと言われた。なんだろうなこの、物凄い違和感。


ノーブルの対悪魔武器製造工場は、銃メーカータナカと、ペンタグランの間に建てられていた。というよりも、ペンタグラン兼工場をタナカの隣に作られた感じだ。


「お待ちしておりました!どうぞ!」


そこの担当者の一人というサブロー・タナカという方に案内をされる。駿馬は馬屋へと車のような物で運搬される様は、さながらドナドナされる動物のようで、正体不明なものに運ばれるという不安と困惑が入り交じった情けない灰馬の顔が面白かった。


「こちらが注文いただきましたものです。全て厳しく検査いたしましたが、万が一故障がありましてもすぐに替えのものをお渡しします。試し撃ちされますか?」


「お願いします」


試作品で試してみたが、一応ってのがあるし。


工場の裏に案内されれば、体育館のような射撃場があった。もちろんギリスの変態魔方陣技術でしっかりと保護済み。

ラビが口をあんぐりと開けたまま何も喋らないのが怖い。

呆気に取られるって、こういうこと言うのか。


「俺あとであの魔方陣調べるわ」


「解析すんだらオレにも回してくれ。練習始めるぞ!!」


すぐさま練習という名の訓練を開始した。

といってもオレとネコ対ラビ司令塔と全隊員という大規模魔法戦なのだが、お互い潰れない弾を使った機関銃を装備し、更に皆で考え抜いた対銃撃用の防護魔方陣を重ね張りした装備を身に付けてだけど。


あらかじめ試し撃ちの際に大規模訓練をしても良いかと許可を貰っておいたので、ここには遊撃隊しかいないが、訓練が物珍しいのかギャラリーが。といっても魔方陣の外側からだが。

内に入ると命の保証は無いしね。


運んできた人に盾の確認を取ると試作品では無いと言われ、キャンプにいる皆にもこれは誰のかと聞き回ったが誰しも首を斜めにされて持ち主不明だったあの盾を使って色々実験をしてみた。


魔力の通りが恐ろしく良くて、魔法攻撃をする事は出来ないがなかなかに使い勝手がよい。


それにネコも調子が良いらしく、機関銃を少し弾き返す事が出来るようになっていた。ネコのチートはますます磨かれている。


皆息が上がる頃、休憩を入れるかと訓練を止めると何故か拍手喝采が起こり、ギャラリーも、二倍以上に増えていた。その大半が技術スタッフ。仕事しろよ。


「おーい!!」


その時、スタッフの一人が結界を抜けてやって来た。


ゴツいおっさんだった。

一瞬誰だと思ったが。


「エルトゥフの森以来か!!」


との言葉で思い出した。


「イヴァンさんのお父さん!!」

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