第419話 前線予想地へと.1
悪魔に動きがあったと報告があったのは、三日後の事であった。
ハシ国とウヴラーダ国を呑み込んだ悪魔の軍が、皆の予想通りにマゾンデ国に進行し、激戦になった。緊急要請が防衛軍に入り、てっきり遊撃隊にも連絡が来るのかと思ってたのに。
「じゃ、また戦場で会おう」
選ばれたのはトビアスでした。
理由としては、遊撃隊の次に部隊として復帰したから。
一気にマゾンデ国近辺に飛ぶ為に、リオンスシャーレ最大の転送装置がある首都の隣街、ビッツへと戻っていく。正確にはビッツに戻るため、南部最大の街ヤイヤパへと行くのだが。
従来の移動魔方陣じゃあ一度に移動するのに限界があり、どうしても時間が掛かる。ので、それを解消するために、移動屋の隣に門みたいな、もしくは絵画の額縁のような構造物を建て、そこを通れば移動できるようにしようとしているらしい。
いわく、『今のままでは移動属性を持つ魔術師の人手不足だ』と。
四代元素の水流、旋風、火焔、土石はゴロゴロいるのに。どうしてもその派生と言うか、付属扱いになっている属性は数が少ない。
『で、ネコ達は何処に行くって?』
「海渡ってホルン経由でノーブル行く。そこで完成品を受け取って前線予想地点へ向かえってさ」
『海渡るの?』
「隣国の様子も見てこいってさ。遊撃隊になればあっちこっちホイホイ飛んでいけると思ったのに、未だに西しか飛べてなくて不満」
もう少し東の方にも飛ばして欲しい。主にルキオ周辺とか。
『でもあれでしょ?ケータイの地図に亀裂情報更新してるんでしょ?』
「そうなんだよ」
悪魔の影響下知らないが、ノーブルからホールデンにかけて亀裂が増えている。戦力増加の為かなんなのか。この前ニックから来た情報で、チクセにあった魔方陣の謎が溶けたとか言ってたが、あれは恐らく世界最大級の移動魔方陣だ。って。ニックの意見を纏めると大陸中に散りばめられた謎の魔方陣を解いているうちに法則性を見付け、今までの魔方陣の位置や角度を調べていて判明したという。
特にウォルタリカで見つけた魔方陣を雪の中地道に解除していくのに骨が折れたとかなんとか愚痴が書かれていた。
東の方は見付け次第解除していってるが、西の方はまだ解除しきれていない。だから残された魔方陣で転移してくるなら恐らくそこだろうから注意しておけと書かれていた。あと、気になる点が一つ。
見たことのない魔方陣がある。という。
普通の魔方陣は少なからずとも法則性があり、その形によって意味を成し、それが歯車のように繋がって効能を発揮する。なので、見るだけでそれがどういう機能を持った魔方陣なのか分かるのだ。勿論、魔方陣の描き方も色々あるが、それでもニックが見たことのないものがあるとは、少しこわい。
「ライハ、船の確保ができた。行くぞ」
「おーけー」
そこから船で2日過ごした。最短距離とはいえ、警戒は怠らない。ほんの少し前までこの海域は魔物によって封鎖されていたのだから。撤退したと言っても一時は占拠されていた土地、何時なんどきどこから襲撃があるか分からない。
だが、オレの心配は杞憂に終わった。
ホッとしつつもホルン国に上陸したわけだが、やはり両隣が占拠されていたからかホルンの港はがらんどうだった。必要な人達しかいない。
「人がいねーな」
「だね」
『あそこにいるじゃん』
「あれは船員」
「自主避難ですかね」
第一波の攻撃を受けてないとはいえ、両隣が占拠されたら逃げたくもなる。なんせホルン国の軍は自警隊と融合してしまって戦力が殆ど無いに等しい。同盟を組んではいるけど、みんな自国で精一杯で、うちまで手を回してくれないと早々に悟ったのだろう。
「まぁ、いいよ。とにかく一気に北上してノーブルに入ろう」
「ノーブルにも早く往復機能のある転送門を作ってくれ」
「今送るの片道しか無いからな」
といっても、ノーブルは行動が早い。早めになんとかしてくれると信じている。
駿馬を走らせる。
季節は春に移行し始め、くすんだ大地にちらほらと色鮮やかな花が咲いているのが確認できた。
だが、見とれている時間など無く、咲いた花を蹴飛ばしてでも先を急ぐ。
そろそろトビアス達はマゾンデに着く頃だろうか?
転移できる装置があの辺にはイリオナにしか無く、そこから南下して行かないといけない。この世界は移動するだけでも大変である。
『ライハー、あれかな?』
「!」
ネコの指し示す方に国境を分かつ灰色の壁が聳え立っていた。
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