第418話 しばしの.3

倉庫内だと実験は色々危険なので、近くの空き地に盾の魔方陣や結界の魔方陣の強化も統べるべく隊員達と楽しく届いた兵器の(使い方を覚えるため)試し撃ちをしていた所、変なものが混ざっていた。

盾ではあるが、どう見ても違和感のあるそれ。


作られた試作品にしては古く、傷も所々ついている。


厚みはなく、そして掌よりも少し大きいくらいの面積で、盾として機能するのか怪しいが、何故かその盾から目が離せなくなり手に取った。

すると、飾り玉が光り盾の表面に魔力の幕が張られた。


思った以上に軽い。


それに、腕に装着できるから邪魔にならない。

これの説明書は何処かと探してみたが、番号も説明書も見付からないけど、使っているうちに魔力の注入次第で面積を増やしたり減らしたり、形を変えたり、また魔方陣を貼ることも可能だと分かった。


問題は強度か。


「誰かこっちに火焔弾撃って」


「隊長にですか?」


「そうそう。ちょっと試してみる」


左腕に装着された盾に気付いた隊員、フィランダーが、分かりましたと言って、魔方陣札で火焔弾を撃ってきた。


普通の魔方陣の盾でも防げる。

だが。


──チュン。


なんだ今の音。


雀が鳴き声に似た音を発して火焔弾は消えた。


「?」


衝撃もない。


「今度はもう少し強いやつ、火焔爆撃玉を撃ってくれないか?」


「私が撃つと結構威力ありますけど…」


「構わない、何処までいけるのか調べたい」


「分かりました」


フィランダーの魔力の属性は火焔属性だった。だからか、魔方陣の火焔属性のものになると初級から中級と繰り上がるときにフィランダーの魔方陣は威力が上がる。本人的には最後の線を入れるときに「燃えろ」と念を籠めているからではと言っていた。

確かに念を籠めると魔力の質が上がる気がしていたが、オレだけじゃなかったようだ。


フィランダーが素早く魔方陣を描きあげ発動する。


「じゃあいきますよ」


「おう!」


火焔爆撃玉の衝撃は大の大人がタックルしてくるくらいで、しっかり踏ん張ってないと飛ばされる。

飛んできた火の玉が、着弾した瞬間に爆発し、凄い衝撃が来ると思ったが。


──チュン。


またしても微かな音をさせて消えた。


「見た?」


「見ました」


「どうなった?」


「消えました」


「おおおお」


何か知らんけどこの盾魔法喰ってくれる。

まるで暴食の主だ。と、そこまで思い立って左腕を見る。暴食の主が巻かれている。暴食の主を外し、右腕に巻いてフィランダーにもう一度指示を飛ばした。


「もう一度!」


「もう一度ですか?分かりました」


火の玉が飛んできて爆発。今度は物凄い衝撃がきた。

やっぱりか。


「隊長何したんですか?」


「この盾、オレの持ってる危険な魔具の影響を受ける」


「危険な魔具?…その、くたびれた紐のことですか?」


「君結構失礼だな。これ割とヤバイやつなんだぞ」


紐を地面に置いて近くの石を投げると、紐の近付いた瞬間に消えた。


「消えた?」


「暴食の主。近くにいる装備を喰う」


なんだなんだと近くの隊員が集まってきた。

隊員に遊んでもらっていたネコも。分析していたラビも。


「でも隊長のは何か違ったじゃないですか」


「オレが触れてると魔法を喰うようになる。呪いのせいで」


「反転の呪いでしたっけ?魔具の性質まで逆転するんですねそれ」


「そうなんだよー、めんどくさくて。でもメリットもあるし」


「最近のメリットなんかあったっけか?」


ラビが笑いながら言う。


「………ねーわ」


まぁこれはタイミングだから仕方がない。


そこから試しに機関銃の弾にも通用するかを確認しながらやってみたところ、やり方次第でギリギリなんとかなることが判明した。これで少しは楽に切り込めるかもしれない。


その日の夕方、ニックから虎梟便が届いた。


開いてみて、よろしくない内容のそれに眉を潜める。これは、下手したらちょっと良くない事になりそうだ。

情報を共有するべく、恐らくカリア側にいるスキャバードの人達にも知らせるために、オレは自室に戻りペンを手に取った。

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