第360話 剣を奮え.9
『 無礼な、離れよ 』
「!」
ギィィィィィと不快な震動と共に頭が回らなくなる。
が、二度目となれば耐えられる。構わず振るい、剣先が届くという瞬間、目の前に火花が弾け大爆発が起こった。
「ぐああ!!」
吹っ飛ばされる体。咄嗟に腕で庇うことも出来なかったから全身焼かれ、特に目が痛い。
「大丈夫か!!」
ぶっ飛んだ先で誰かが受け止めてくれた。ノルベルトの声だ。
「いってぇぇ、一体何が起こった?」
ジクジクとした痛みを感じる。
一瞬赤と白が見え、爆音と共に焼かれたから爆発があったことは分かるが、なんで爆発が起こったのか分からない。
「あいつの鎧から突然赤い粉が涌き出して一気に燃え上がったんだ。手助けしに来た奴等が何人か巻き込まれた」
「ネコは?」
「爆発の瞬間消えた。死んだわけじゃないと思うが」
瞼が開きにくい。
それでも激痛の中無理矢理抉じ開けると、ボヤけた視界で辛うじて奴の周辺が放射状に黒く焼けた後が広がっている。結構な広範囲だったらしい。
『びびびびびっくりしたなぁーもう』
耳元で声がした。
「? ネコか?何処にいるんだ?」
「声はするのに見えねぇ」
『ごめん、尻尾で投げたと避難してた』
ずるりとネコの上半身だけがフードの中に現れた。
『ねぇ、ライハ。あいつ、いつもの感じがするね。このままじゃあヤバくない?』
「うーん。うん」
視界が元に戻ってくると、襟巻き角竜が少しずつ前進してきていた。前線の悪魔達も数が減ってきているが、勢いは衰えず、むしろ数的に不利なこちらがじり貧状態になっている。
「おい!生きてるか!?」
「ライハ!」
アレックスとニックがやって来た。二人とも──ノルベルトもだが──返り血を浴びてどろどろだ。
「後方支援は?」
「大丈夫だ。代わりにやってくれている奴が来た」
「それにしてもなんだいアイツは。変な鎧着てさ。爆発するとか反則だぞ」
ようやく視力が戻ってきて、自力で立ち上がる。
見る限りアイツがここの大軍の指揮を執っていることには間違いないんだが、問題はあの襟巻き角竜のバリアと後方の無事な奴等なんだよな。
「助けに来てくれた連中もだいぶ負傷してきてる。このままあの後ろのが来たら、最悪全滅するかもしれねぇ」
ノルベルトが苦虫を噛み潰したような顔で言う。
「……ノルベルト、あの襟巻き、さっきの結界の時足元にも出てたか?」
「は?」
「俺の見た感じ、ああいうタイプは足元が疎かになるのが多い。そして連結が解ければ条件不足で張れなくなる可能性もある」
ニックがニヤニヤと話し出した。これはなんか良くないことを企んでいる顔だ。早速ニックが簡単な作戦を伝える。
それにしても、確かに灯台もと暗しというけど、本当にそんな作戦で行けるのだろうか?
「ラビ、いるんだろ?」
すぐ至近距離でラビが姿を現した。そんなところにいたんかい、気付かなかったわ。
「双剣をガルネットに貸してくれないか?」
「別にいいけど」
双剣をニックに手渡した。
「ラビずっと何してたの?」
服がやたら赤いけど。
「怪我人運んでた」
「なるほど」
知らないところで黙々と働いていたのか。
能力的に合っているもんな。
にしても、だな。
「本当にオレは大丈夫だろうな?」
魔方陣じゃない魔法を使えと言われたが。
「俺のフォローを舐めてもらっちゃあ困るな。お前はあの角兜をどうにかして足止めしながら、隙を見て足元を凍らせ」
「そんな器用なことできるかわかんないけどやってみるわ」
多分甲殻出るから手袋は装着して準備完了。
『ネコはライハを内側からフォローするよ。そうすれば少しでも魔力を安定させられるかも知れないしね!』
「ありがとう、頼んだよ」
それぞれ武器を手に並び、アレックスがジャスティスを構えながら、魔力を籠める。
「そんじゃ行くぞ!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます