第359話 剣を奮え.8
ネコモードに切り替わった瞬間、意識が落ちてくる欠片に集中させるために理性の抑制を落とし、ネコに任せた。すると。
「ふっ…!」
手が物凄い勢いで動き、瞬く間に手が届く範囲の欠片を切り落とした。少し腕がもげるかと思ったが、それでも手が止まらない。なるほど、本能って怖い。
『いでぇ!!いでぇええよぉ!!!』
『ちくしょう!!!こんな話聞いてないぞ!!!』
『腕が無い!!!おれの腕は何処だ!!?』
「!」
辺りで悪魔達が呻いていた。
目を向けてみて初めて気付いた。前線にいた悪魔達は先ほどの攻撃を回避するすべもなく直撃していたのだ。体のあちこちに欠片が突き刺さり、切断され、地に伏して動かないものもいる。
まさか、仲間に何の説明もなしに、捨て石として使ったのか。
『よーい、放てぇぇえ!!!』
「!」
またしても放たれる大量の欠片。しかも今度は先程よりも数が多い。
今度は全てを落とすのは無理だと判断し、一旦下がる事にした。
「人間をナメんなよ!!!」
しかし、後方でノルベルトの怒声が響き渡る。大剣をガルネットに手渡したノルベルトの体に魔力が沸き上がり、体制を低く構えると、強く地面を踏み締め、同時に両手を高く掲げた。
すると、降ってきていた欠片が突然勢いがなくなり、空中でピタリと止まったのだった。
(これは、チクセで危なかったときに瓦礫が止まったやつ。やっぱりノルベルトさんだったのか)
ホッと息を吐き掛けたが、ノルベルトの様子を見てまだ安心出来ないと感じた。
「ぐ、ううううううう!!!!」
「ノル!無理するな!!」
「今しねぇでいつするよ!!!」
ノルベルトの顔色が良くない、負荷が掛かるのか。
長くは持たない、どうにかしてあの欠片を退かすか、または弾き返せないか。
「……あ」
上空を見上げ、あるものの存在を確認する。
思わず口許に笑みが浮かんだ。
全部お返ししてやろう。
大きく息を吸い、思い切り指笛を吹いた。
笛の音は山で木霊して遠くまで響いていく。
次の瞬間。
「来た!」
南から激しい突風が吹き荒れ、制止していた欠片を全て悪魔側の方へと吹き飛ばした。そのまま降り注げと念じた。だが、襟巻き角竜の襟巻きが一斉に光り、欠片は突然出来た網目状の結界によって防がれてしまった。
「……ちっ」
思わず舌打ちが出た。
やっぱり
「ーーー悪魔を滅ぼせえええええ!!!!」
「てめぇらの好きにはさせないぞォォ!!!!」
「!」
突然後ろの方で雄叫びが次々に上がった。
何だと思わず後ろを確認すれば、たくさんのハンターが集まってきていた。
先頭に見に覚えのある桃色の髪。
ラビが救援を呼んでくれたようだ。
『ひぃいいいい!!!』
それを見た生き残った悪魔達が逃げ出していく。
だが、襟巻き角竜達と後ろの連中は逃走を許してくれなかった。
『開けてくれ!!開けてくれ!!』
『話と違う!!俺達ではもう無理だ!!』
助けを求める悪魔だが、後ろの武装した一人が襟巻き角竜の背中に乗り、こちらに剣を翳した。
『 行け、この地を手に入れ、魔王様に捧げる事こそ貴様らの使命だ。 引くことは許さん。 進め、進め 』
ーーギィィィィィ!!!
頭に直接震動と声が伝わってきた。
頭の中が掻き混ぜられ、思考がボヤける。
『ーーライハ!!!しっかり前見て!!!』
「!!」
ハッと我に返ると、首もとに刃が迫っていた。
「~~~~ッ!!」
咄嗟に左肘で弾き上げる。刃が髪の毛を掠めて薄い音を立てた。
大きく体制を崩し右手を地面に着けると、蹴り上げた。綺麗にこめかみに入って悪魔は崩れ落ちる。
「ビックリしたぁー!」
立ち上がり様にそう言うと、ネコに『こっちの台詞だよ!』と怒られた。
あんなに逃げ腰になっていたのに、大怪我をしながら武器を振りかざし突進してくる様は正に狂気だった。いくら蹴散らしても、意識がある限りどんな状態になっても襲い掛かってくる。
しかも、先程は全く連携が取れていなかったのに、今ではひとつの生き物のように襲い掛かってくるのだ。
これは頭に響いた音と何か関係があるのか?
「助太刀しに来た!!」
横を誰かが通り抜ける。増援か、ありがたい。
周りを見ると、見える範囲でも20人程が応戦してくれている。
これで負担が小さくなる。
「ネコ、前の奴見える?」
『うん、見えるよ。叩くの?』
「あれが司令官だったとしたら、倒すだけでもかなり戦力を削げる。ついでにあの襟巻きのをぶっ倒そう」
『ネコ達の力を見せてやるぜ!』
ネコが影から立ち上がり、融合を解く。
こちらに流れが来ている今、チャンスはここだ。
身体能力向上でネコと共に標的に一気に間合いを詰めた。
標的に向かってオレは黒剣を、ネコは鈎爪を奮う。
頭まですっぽりと角出し兜を被った悪魔は、動かない。
ただ、視線だけがこちらを向いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます