第334話 魔術師

国境が、封鎖されていた。


「えぇえー!!」


「おいカミーユどうゆう事なんだこれは!言ってなかったじゃないか!!」


「知らないわよ!!多分悪魔の襲撃で街二つやられたからって感じじゃない!?うちの国怪しきものは閉め出すってのがあるから!!」


『山から行く?』


「この時期にか?もう雪降ってきてるのに?」


視界にチラチラ映り込む雪。

この辺の雪は足が早い。一旦降ったと思えばしばらくずっと降り続く。三日前からヤバイなと思っていたのだが、まさかのタイミングである。


ということで、近くの森で雨宿りならぬ雪宿りをしているのだが、まぁなんというか、寒い。

勿論こういうとき灰馬は最高である。暖かい。そして爬竜馬のレックスに至っては爬虫類特有の気温がある程度下がると走れなくなるので、今はカミーユの魔法具の防寒具とラビの魔方陣で何とか凌いでいる。


オレも一定間隔に焚き火を起こして暖を取れるようにしているけど、限界がある。


寝床を作れる魔方陣があれば良いのにな。


で、先程街に情報収集から戻ってきたアレックスが溜め息を吐きながら戻ってきた。


今んところ解放の見込みがないらしい。


『光印矢をくわえて翔んで、パルジューナに置いていくとか?』


「また食われても知らんぞ」


『それは嫌だなぁ』


ラビが冗談で言ったのにネコはオレの所へとやって来て服のなかに潜り込んだ。冷たい。


「一応虎梟を飛ばしておいたから、隣だし、明日には連絡来ると思うよ」


向こうにいる仲間の誰かが気付いてくれるのを待つのみだ。










キーンとした耳鳴りがしたような気がして、簡易テントから出てみた。辺りはすっかり白くなっていて、静寂が満ちていた。


「なんだ?」


そんな森の中を白い物が飛んでくる。


近くまで来て驚いた。それは紙飛行機だった。

紙飛行機はオレの目の前まで来ると、クルンと回転すると元の正方形の紙に戻る。そこには魔方陣が描かれていた。


見た瞬間、それは指定してある所に何かが転移してくる物だと分かった。


慌てて距離を取ろうとしたが、その前に魔方陣が発動して軽い発光と煙が飛び出した。それなりに重量のある物が地面を落ちる音。前を向いて、また驚いた。


「よお、久し振りだな。お前また凄い方向に変化しちまってるじゃないか」


「え、なんで?」


そこには、ニックが呆れたような笑みを浮かべて立っていた。


「なんでって、迎えに来たんだよ」


と、ニックが杖で簡易テントを指すと、中でボンッという音とアレックスが慌ててテントから飛び出して来た。


「うちのパーティーリーダーをな」

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