第333話 ネコ、目覚める
変装を解き、そこでようやくカミーユの紹介をしてくれた。カミーユ・ボンジョレー、魔法具作りの天才で、アレックスの仲間であり、ラビにナンパされた後色々あって最終的にナンパ仲間になった人らしい。あの街について手形をつけた張本人。
「天才と狂人は紙一重って言うけど、まさにそれを素で体現したやつなんだよ」
「あーら、嬉しいこといってくれるじゃないの!」
「褒めてないんだぞ」
そしてアレックス。仲が良いわけではないらしい、少なくともアレックスは。曰く、腕には信用があるけど性格的に信用ならないらしい。よくわからんけど腕が良いのは分かった。
「それにしても、大丈夫かよ。顔色悪いぞ」
ラビがオレの顔を心配そうに見ていた。
そんなに悪いかな。
「うーん、なんだろう。熱っぽい感じはする」
額に手を当ててみるが、手も熱いのでよくわからない。恐らく大量の神聖魔法を食らったことで、体に凄いダメージを受けたのと、傷のせいだと思う。
神聖魔法久しぶりだったけど、やっぱり辛いな、アレ。
「無理はするなよ」
「わかった」
その時、もぞりと胸元が動いた。
そして、『うーん』という声とアクビをしている動き。
思わず襟から中を見ると、ネコが起き出していた。よかった!!
「ネコ起きた!?」
「ほんとか!?」
アレックスたラビの顔に笑顔が戻り見たいと集まってくる。
「ネコ、体大丈夫か?」
『……ん、んー。なんか凄いお腹すいた』
いつものネコだ。毛繕いをしているときに、ようやく自分の体が縮んでいるのに気が付いたらしく、『なにこれーー!!!』と叫んでいて笑えた。
洞窟を見付けて焚き火を囲む。
目をキラキラさせながらカミーユがネコを見ている。可愛さが止まらないのか口からずっと小さく可愛い可愛いを連呼していた。気持ちはわかる。
そんなネコは空腹が止まらないのかずっと何かを食べていた。アレックスが狩ってきたはぐれラオラ一頭ペロリと平らげ、ネコの体は元の大きさにまで戻っていた。本当に不思議な生態をしている。
『ネコたべられていたの?』
「そうなんだよ、大変だったんだぞ。死ぬかと思ったし、ライハに角生えちゃうし」
「変に高質化した皮膚も追加してくれ…」
アレックスとネコが寝ている間の出来事を聞きながらオレはラビから治療を受けていた。といっても魔法の治療ではなく薬草の治療だが、手足は自分で出来るが、背中の矢の傷はどうやっても無理なので。
「あー、めっちゃ染みるー」
でもその痛みが人間に戻れたみたいな感覚がしていた。最近怪我しても秒で治ってたから。
「それにしても綺麗な角ねぇ、消しちゃうの勿体無いわ」
と、うつ伏せで動けないのを良いことにオレの角をさっきから触りまくってるカミーユ。頭の付け根がゾワゾワするから止めてくれ。
「しかたないだろ、こいつのせいでエライ目に合ったんだから」
「うんうん」
頷く。
あっても特に役に立たない。
メリットなんて、せいぜい頭を守るヘルメットがわりになるくらいで、デメリットのが多い。
あと角生活して分かったんだけど、これ、肩がこる。
角の分頭が重いんだよ。
「本人がそういうなら仕方無いわね。ねぇ、アレックス。あいつコレ消せると思う?」
「消せると思ってるけど。ん?てかもう居るよね、パルジューナ」
「いるハズよ。虎梟来たし」
「消せるのコレ」
消してもらえるのならとても嬉しい。
「なかなか凄腕の魔術師よぉ。もしかしたらその腕や左目のも消して貰えると思うわ」
それはありがたい。
それからはできるだけ身を隠し、街に寄らないといけないときはカミーユとラビのナンパコンビが灰馬達を連れて行くことに。灰馬がラビになついてくれて良かった。ナンパするなよ。
その間、オレとアレックスとネコは魔物を狩っている訳だが、なんだか魔物が多いなと奥の方に行ってみたら亀裂を発見した。
そういえば亀裂の事を忘れてた。いけないいけない。
その亀裂は誰かが強引に蓋をしようと岩を乗せていたので、魔物は小さいものしか出てこれなくなっていた。誰だか知らんがありがとう。
そのまま亀裂を閉じた。
そうして10日掛け、ようやくパルジューナとの国境へと辿り着いたのだった。
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