第332話 変装
アレックスから手渡された光彩の魔法具を身に付けていると、女性があら!と声を上げた。
「やだぁ!この子に使うつもりだったの?もうそれならそうと早く言いなさいよー。待って、もっといいの貸してあげるから。あと名前カミーユね、カミュで良いわ」
そう言ってカミーユは自分の鞄から違う魔法具を取り出した。見た目はただのマント。ただ、びっしりと何かの模様か編み込まれている。
「これ着てみて!」
「ねぇ、その模様ーーげふっ!」
何かを言い掛けたアレックスの鳩尾に、カミーユの肘打ちが炸裂した。大丈夫なのか?これ。とても恐いんだけど。
「なぁ、俺さっき言った通りライハには反転する呪いが掛けられてるって言ったじゃんか。平気なのか?」
「わたしを誰だと思ってるの?そんなの逆に利用するのよ。ささ!着てみて!」
「じゃあ、遠慮無く…」
羽織ってみるととても軽い。
「ん?」
なんだか違和感を感じて頭に手をやると、あの厄介だった角が無くなっていた。何度触っても、別のところを触っても無い。
あまりにも嬉しすぎて変な声が出た。
「なんで消えたんだ!?」
ラビも驚いている。
「んふふふ。実は、これ、余計な付属品を付けるっていう魔方陣なのね。昔アレックスに尻尾が生えたやつ。それ使ったら余計な付属品を消すことが出来るんじゃないかと思ってね」
「こ…今回ばかりはグッジョブなんだぞ…」
鳩尾を抑え蹲りながらグッジョブサインをアレックスが送る。てかそんな痛いのか。
他に変わっている所が無いかを探してみたが、角が消えただけで、手とかはそのままだった。
初めて気付いたラビが痛そうとか言ってたが、特に痛くはない。仕方無いので、左目付近と手から腕に掛けて包帯を巻いた。
「あとネコ。凄い熱いけど大丈夫かな」
「ありがとう!!」
ネコを受け取ると、熱が。急いで欠片を取り出すと、口の中に含ませた。すると欠片はすぐさま溶けてネコの魔力に混じり込んだ。これでもう大丈夫だ。
一撫でしてから服の中に入れる。服の中に入るネコの為に内ポケットを改造して広くしてたから良い感じに収まった。
「じゃあついでだから、みんなの容姿を変えるわね!動かないでよー」
なんとも頼もしいカミーユ。
オレ達はカミーユの手によってみるみる内に別人へと姿を変えたのだった。
ラビがむすっとした顔をしている。
「おい、なんで俺これなの」
女装のラビは、元が良いからなのかめっちゃ美女になってた。てか、なんかその顔見たことある。マテラの時、キリコに抱き付いていた女性に似ている気がしたが、なんでだろう。
「何って、似合ってるでしょ?」
と、長身のイケメンが言う。
てか、カミーユ男だったのか。
長い髪は緩く纏めて、化粧は落としている。
なんで女性の格好していたのかと訊ねたら、美しいのを身に纏う趣味と言われた。趣味か、そうか。そういえばアレックスにドを越した変態がいるとか言ってたけど、もしかしてこの人だったりするのかな。
「…泣くなよアレックス」
そしてアレックス。
「………………」
犬の
白い尻尾は力無く垂れ下がり、耳も下がっている。
オレは全然マシで、全体的に色を変えられて髪を纏められたくらいだった。
「なによぉ、ライハちゃんの弓を使って街を出て姿を消す間だけでしょう?もっと違う自分を楽しみなさいよ」
「…楽しむ」
「特にラビちゃんはこれで女の子の気持ちが分かればもっとナンパが成功するわ」
「おっしゃあ、やってやろうじゃねーか!」
テンションの上がったラビとテンションだだ下がりのアレックス、そしてカミーユと灰馬達を連れて城壁まできたのだが、やはり見張りが凄い。門の前なんか完全に封鎖されていた。
「手を離すなよ」
矢に意識逸らしの魔方陣を描いた紙を巻き付けて、力の限り高く射つ。魔法の効果で矢は、気付かれること無く森の中に落下した。
急いで手を繋ぐと、光印矢に魔力を注ぎ込んだ。景色が変わり、森の中に切り替わると、オレ達はすぐさま森の奥の方へと移動した。
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