第285話 一人と一匹.2
『何で逃げたのさ、せっかくの高級素材~』
耳元でネコが不満たっぷりに言う。
ネコがそう言うのも仕方がない。なんせオレは売れば高く売れるセアカグマを仕留めたものの、丸々放って逃げてしまったのだ。
「いや、だって、なんかあの人すごい見てて、しかも凄い顔して走ってきたし」
『ああ、そういや一人来てたね』
セアカグマを倒して、さて、剥ぎ取りを分けてもらおうとして視線を上げると、森近くで尻餅を着いた女ハンターと目があった。こんな暗がりでこちらは見えないはずなのに、しっかりと目が合ってる。
まだそれならいい。こちらが見えてるなら、交渉しやすいかと思ったところで、女ハンターはこちらに向かって走り出したのだ。しかも『何人の獲物横取りしてんだよ』とでも言わんばかりの顔で。
そのあまりの迫力にビビり、思わず逃げ出してしまったのだ。
今更ながら、横取りしたこと謝って交渉すれば良かったかなと思ったが。諦めた。なんか怪我した人とかいたし、その人達で分けて下さい。
「まぁ、良いじゃん。その代わりめっちゃ進めたし」
『最初から森から行けば良かったじゃん』
「それ言うなよ」
オレも思ってたけどさ。
渋滞はだいぶ解消されていて、流れもスムーズになってきていた。街につく前に道に戻ろうかな。
夜になり、キャンプをする人達を森の中から横目で眺めながら、干し肉をかじりつつ先に進む。もう少し人が少ないところで休憩を取ろう。
少し行ったところで、いい感じに人がいないところを無つけたので、然り気無く道に戻ると、座らせた灰馬に寄り掛かり仮眠をとった。
眠りに入るか入らないかのうたた寝をしていると、灰馬が少し身動ぎしたことによって目を覚ました。
耳を済ますと狼の鳴き声と、草を踏む音が近くの森で聞こえてきた。魔狼か。一人だと戦闘になるとめんどくさいな。
ネコはオレの服の中でスヤスヤ眠っているから動けない。仕方ない。
頭を動かして魔狼の気配を探ると、こちらを伺うのが一匹いる。
そちらを見ると、目があった。
偵察をしている魔狼だった。なら、威圧が効く。
目を睨み付けながら『何オレの縄張りに侵入してんだお前』敵な気持ちを乗せて威圧を放つと、魔狼は耳を下げ視線を逸らした。勝った。
そのまま魔狼は尻尾をお腹側に丸めたまま森の中に帰っていった。
これで安心だ。
「嘘だろまた渋滞かよ」
翌日、ルエン街へと着くと、長蛇の列が出来ていた。勿論避難民のだ。
そうだろうなとは思ってたが、実際目にするとゲンナリする。しかしここより先には防寒具をしっかり買える所はない。
「(ネコー、しりとりしようぜ)」
『(いいよ!じゃあ、ネコから!とりにく!!)』
そんな感じで待ち、門番からの難民かどうかの質疑応答をして、ようやく街の中に入れたのだった。
カリアから山越えの知識やら、洞窟の抜けかた等の知識は叩き込まれ、神からの記録もあって何が必要なのかは分かったが、実際に行動するのは初めてなので不安だらけ。
一応宿を取り灰馬を預けてから、必要物資を買いにいくことにした。
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