第243話 贈り物

忘れていた。


前、ザラキさんに習った。魔力は同調、流れを合わせようとする性質があるんだった。


ポタポタと水滴が落ちる髪の毛を拭きながら、水に巻き込まれ流された物を拾い集めながら、今更ながら何であんな事になったのかを考えた。


幸いみんな無事で、泉の水もきちんと満水状態になった。


流れ出た水は水の精霊スーイが集め、まだ淀んでいる箇所へと持っていき、ナマコモドキも使って水質改善に当てている。


それにしても、まるで強い磁石同士がくっついてしまったように外れなかった。


ザラキ曰く、魔力は水のようなもので、流れるものに従って動きやすい。特に、吸う力と放つ力が近いと、その物質同士の魔力の流れる道がパイプのようになって、流れを安定させようとして物質同士が吸着力を持つことがあるらしい。


ちなみにその性質を使った魔術師専用の罠があるとか。


(聞いてはいたけど、体験するとそのヤバさが分かるな。カリアさんも手が外れないくらいだし)


しかも、あともう少しで魔力欠乏になるところだった。

危ない危ない。


ちなみにアウソは魔力欠乏にはならずにすんだ。どうやら後ろにいた三人がダメージが大きいらしい。魔力の量と関係あるのかな?


そこまでは聞いてなかったな。

聞けば良かった。


でも、腕輪が見つかって良かった。玉も。


水が治まった後、ウンディーネが見付けてくれた。どうやらキリコの蹴りで玉が腕輪から抜けたらしい。


試しにもう一度さっきみたいに魔力を込めたが何の変化もなし。これはオレが持っていても仕方ないな。


腕輪だけ嵌め直すと、玉をもって片付け中のアウソの所へ向かった。


「くれるの?」


「うん。オレ使えないし。アウソが使ったら水出たからむしろ貰って」


「ありがとう!!練習するわ!」


玉を太陽に翳して嬉しそうにしている。良かった、良かった。

リストの物は集めるけど、オレがずっと持っていろという指示は無かったしな。ダメだったら何かアクションがあるだろう。


「さてと、俺達は仕事に掛かるとしよう。行くぞ!皆!」


「おう!」


そう言ってスライム研究所グループはエルトゥフのガイドを連れて森の中に消えていった。


「仕事?」


「あの悪魔の外郭を使って新たな研究を始めるのと、エルトゥフの森を再生させる手伝いをするそうです。皆専門の仕事をしている人たちなので」


「イヴァンさん、と、グルエルさん」


通り掛かったイヴァンとグルエルが説明をしてくれた。


「大工の知識と石屋の知識で悪魔の素材を調べながら切り崩し、鍛冶屋で加工が出来るのなら、それで新しい道具を作って、農業の知識で焼かれた土地を何とかするそうなんです」


「店長はスライムを回収しに行ってます」


「そうなんですか」


プロの知識なら、森の再生はとても早いかもな。


「では、俺達は他の水の様子を見てきます。行きましょう」


「はい」


そうして二人は去っていった。

それにしても、イヴァンとグルエルは仲良さそうに腕を組んでいるけど、この短時間で何があったんだ?












泉も、村の水も綺麗になり、後片付けも全て完了した。


「これで、やっと問題が解決したわね。疲れたわ…」


「流石にもう火種蟲みたいなことがないことを祈るよ」


「ですね」


「俺は良いの手に入れたから大満足さ」


日が傾き、夕陽に染まる村に火が灯るのを眺めながら宿へと戻る。流石に疲れた。一休みしてから食事にしよう。


そう思って、扉を上げると、机の上にはキラキラとした何だかよくわからないものが積み上がっていた。何これ。またなんか精霊が集めてきたのか。


「ライハ、それ片付けてから寝なさいよ。多分全部あんたに贈り物でしょ?アタシはもう限界…」


凄く眠そうなキリコが山を指差しながら指示をだし、ベッドに倒れ込むとすぐ寝てしまった。

魔力を大量に使って疲れたのか。


確かに、魔法を使うと体を動かすのとは違う疲れが来るからな。


「ごめん、コッチもキツイ。先に休むよ」


そして、カリアもダウン。


いつも余裕な顔をしている二人がオレより先にダウンする姿はなかなか見られない。凄い。希少だ。


「俺はまだ平気だから手伝うよ」


「ありがとう、超助かるよ」


ガラス片に似たものや、光る石を分別して分けていると、山のなかにとあるものを見付けた。


「これ…」


それは紫色の綺麗な玉だった。

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