第241話 良い機会
その後は徹夜で作業した為、皆一度休息を取ることになった。
昼過ぎにようやく
水槽がさざ波立ち、ウンディーネがとても嬉しそうな顔をして飛び出した。キラキラと光を反射しながら、約6トンの大量の水が空を飛ぶ光景はまさに圧巻で、思わず溜め息が漏れる。
あれ?
しかし、いざ泉に入ってみると少ないように感じた。
まさかの計測間違え?
「うそ、しくじった?どっかで水漏れが…?」
後ろは後ろでイヴァンが青ざめてるのを、大工の親父さんが大丈夫だと慰めていた。
「あのー、すみません。なんか、ウンディーネが他の
慌ててイヴァンのフォローをしているクユーシー。そうか、良かった。いや、良くはないのか。大丈夫なのか?これ。
ジーっと泉を眺めていると、ウンディーネが顔を出してこっちを見た。
そして、しきりにこっちを指差している。
オレ?なんかした?
そして自分の手首を叩いている。
手首?
「あ、もしかしてコレ?」
腕輪に填まった玉を指差すと、そうそれ!と言わんばかりに笑顔で頷かれた。
言わんことはわかるが、どうしよう。
オレ、これ使えないんだよ。
「どうかしたんですか?」
クユーシーがやって来た。
もしかしてウンディーネはこれの使い方を知っているのか?
「クユーシー、実はウンディーネにこれを、水を生み出すヤツを指差されてるんだけど、オレ使い方知らないんだよ。ウンディーネなら分かるかな?」
「見せてください」
見せると、ウンディーネに目配せして何かを会話し始めた。会話と言っても口が動くだけで言葉とかは聞こえないんだけど。
『ライハ、何してるん?』
ネコが上機嫌でやって来た。おい、なんか食べてきたな。口周りに汁が付いてるぞ。
「口、カスが付いてる」
『え、本当?』
指差したところを舐める。取れた取れた。
「ライハさん、その玉は水と縁のある者にしか扱えない物のようでして」
「そうか、そういう制限もあるんだな。水と縁か…」
水と縁。
確かにオレは水と縁はあまり無い、カリアは水というか、どっちかと言えば雪とかそんな感じだし。とするならば。
「アウソか」
事情を説明したら、困惑していた。
「いや、無理じゃね?俺魔法発動出来るか以前に魔力も多分あんまり無いぞ」
「でも今んところ水と縁があるのアウソが適任だと思うんだよ」
「えー…」
「いい機会だからやってみなさいよ。できるかもよ」
隣で聞いていたキリコがおもちゃを前にした子供のような顔で言う。
「この神器、神具だっけ?は魔力とかやっぱり使う?」
そしてカリアも。
「オレは発動できなかったから分かんないんですよねー」
でも使うのなら、一回の発動で魔力欠乏になるかもしれない。そうなったら危険だ。
『ネコの尻尾使って、魔力を流すってのは?』
「出来るの?」
『ライハとそれで色々練習しているから、同じようにしていけるなら、出来る』
「…一応万が一の時の事も考えて、オレも繋いで流すよ」
「じゃあ、こっちも」
「アタシも魔力だけならあるから」
「みんな…」
アウソが感動している。
だが、実はカリアとキリコも自分の魔力を使って魔法を発動させたいって思っているんだろう顔をしていたので、自分の為でもあるんだろう。だけど、アウソも含め、せっかく魔法を使えるんだ。オレも全力で手伝おう。
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