第240話 敗けを認める

まさに一瞬の出来事だった。


尻尾を退かした瞬間、亀裂から這い出そうとしている魔物を四人は目にも止まらぬ早さで攻撃、その四人の足元を猫が尻尾を使って残りの魔方陣を仕上げると、レディー・カリアが「遠距離攻撃へ移行しつつ下がるよ!!」と号令を掛けた。キリコ嬢、改めレディー・キリコは剣からボウガンへ、ライハは黒い棒を仕舞うと詠唱も無しに火花をちらつかせる弓を造り出し、両者とも敵の急所を的確に射ち貫ながら徐々に後退をしていく。


そして全員の足が魔方陣の外へと出た瞬間、レディー・カリアが銃を取り出し、魔方陣へ発砲。


魔方陣は光を放ちながら効果を発揮し、亀裂をみるみる内に塞いでいった。


「……これが、高ランクハンターか…」


イヴァンは、瞬きすら忘れ見入っていた。

一般人は滅多にお目にかかれない高ランクハンターの戦闘は、確かに酒場で威張り散らしている狩人ハンターとは別格だった。


(俺の敗けだ)


なのに威張ることなく、力を見せびらかすことなく、自然に振る舞うこの四人に、イヴァンは完敗だと心の中で旗を振ったのだった。













心臓がバクバクしている。


(よかった上手くいって…)


来る途中で簡潔に伝えられた作戦の、即座に近距離攻撃から遠距離攻撃への切り替えと、出来るだけ一発で仕留め、入口を塞ぐ感じにして、次の敵の邪魔になるようにする。ってのが一番神経使った。


見られてる緊張もあったが、絶対に失敗できないから。


それに思ったよりも魔方陣を大きく描いちゃって後退するのに時間掛かったな。もう少し魔方陣を描くの練習しよう。


一応ほつれがないか確認してから、ゴーレムから降りても平気と合図を出した。


「いやいや、すごいな!!俺達は初めて高ランクハンターの戦いっぷりを見たが、成る程、これは凄い!」


「あたたた、ありがとうございます」


アンドレイ店長の手が頭に置かれてグリグリと撫でられた。


それに、なんか、イヴァンのこっちを見る目が違う気がするけど、気のせい?


「それにしても、リューシュって奴はとんでもない奴だったね」


「?」


カリアがリューシュの折れた尻尾を見ながら言う。なんだろうと同じく見ると、リューシュの中身は空っぽだった。空洞。

てことは?


「逃げたわね」


「まさかの外郭を身代わりか。予想外だったさ」


「悪魔は本当に思いきりが早いな」


レエーもだけど、不利だと悟るやすぐさま逃げる。

メタ⚫スライムか。

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