第239話 キリコ、解せぬ
それはいかんと言うことで、各自万が一に備え戦闘準備をすると、急いで亀裂へと向かった。
(イヴァンは寝てたのに大工の親父さんとアンドレイ店長に叩き起こされていた。)
亀裂に集まったのは酒盛りグループとクユーシーにイヴァン。他のエルトゥフ達は馴れない力仕事で皆ダウン。スライム研究員メンバーはせっかくだから高ランクハンターの仕事を見たいんだとか。
イヴァンは巻き込まれ。
「調子はどうですか?」
軽く屈伸をしているカリアに訊ねると。
「まだ少し痛むけど、問題ないよ」
とのこと。
「今回はあんた達で描いてみるよ。練習練習ー!」
と、カリアが魔方陣をオレ達に丸投げし、苦戦しながら描いている間に一ヶ所に集めた魔物の屍を運んできて、カリアとキリコと力なら任せろとスライム研究員メンバーが定位置に置いていく。
「…………思ったよりも描きにくい」
亀裂が複雑で、大きい。
それでもなんとかネコにも手伝って貰いながら描けるところまで描き終えた。後はリューシュの尻尾の下のみ。
「ふう」
改めて見ると、でかい。
まぁ、あんだけ魔物が這い出てたんじゃでかくもなるか。
「じゃ、尻尾を退けた瞬間出てきたのを全力でやるよ。ネコはその隙に魔方陣完成を」
『りょーかいっ!』
「戦えない人たちはゴーレムの上へ」
「おう」
「ささ!レディー・キリコもこちらへ」
イヴァンがキリコに手を差し出した。
なぜに?
「なんでよ?」
本気でキョトンとするキリコ。
「ですから、そこにいては戦闘に巻き込まれて危険です。いくら従者達や雇用者が心配とはいえ、まずは身の安全をーーーあいたっ!!」
ゴスンとイヴァンの頭に拳骨が二つ落ちた。
アンドレイ店長と大工親父だ。それを他の仲間が苦笑していた。
「バカヤロー!キリコさんは高ランクハンターだ!それに従者とはなんだっ!!ここにいる人達は皆高ランクハンターなんだぞ!!カリアさんに紹介されただろうが!!!」
「店長、そんときこいつ寝てたよ。すまんな、お前さん達。アホな
頭を押さえながら目から鱗の顔をしているイヴァン。こちらを指差し。
「え、高ランクハンター?」
頷くキリコ。
こちらを見る。
「全員、高ランクハンター?」
「はい」
従者に見られてたのかと笑いを堪える。そしてキリコが非戦闘員とか笑う。想像してみたが無理だ。笑いそう。
「なんなら証拠でも見る?」
と、
気にはしてないけど、だから泉の上でターザンをキリコがやったときにあんなに激怒してたのか納得した。
「と、言うわけなんで、
若冠不貞腐れ気味のキリコがイヴァンに、早く行けと、ヒラヒラ手を振った。
弱いと思われたのが解せなかったのか。
避難を確認し、各々武器を構える。
「油断は禁物よ」
「できるだけ早急に」
「いきます!!」
クユーシーの声を合図にゴーレムの手がゆっくりとリューシュの尻尾を持ち上げた。
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